サービスとしてのITシステムは共有された「仮想化」と「グリッド」で実現される

近年、仮想化技術はIT業界のキーワードとして頻繁に登場している。仮想化による統合はメリットが大きいことは言うまでもないが、仮想化の導入をゴールとしてしまうのでは不十分である。ここでは、共有されたシステムによる仮想化とグリッドでユーティリティ化を実現するHPとOracleの取り組みについて見ていこう。

» 2007年03月16日 10時00分 公開
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 「ハードウェアの運用コスト削減やビジネスの変化への迅速な対応というビジネス上の課題に対し、半数以上のユーザーが仮想化技術の導入にメリットがあると感じている。反面、仮想化技術を導入することで、運用管理の体制は複雑化するのではという懸念も持っている」――2006年9月開催の仮想化技術紹介セッションの参加者に実施したアンケート結果を基に、日本ヒューレット・パッカード マーケティング統括本部 インフラストラクチャソリューション本部 担当部長の小桧山淳一氏は、現状の仮想化技術に対するユーザー意識をこのように説明した。

 ここ最近、「仮想化」はIT業界のキーワードとして頻繁に登場している。仮想化技術導入によるメリットは、さまざまなベンダーやメディアから数多くの情報提供がなされている。一方、デメリットに関してはあまり情報提供されていないのが現状だ。1つのアプリケーションに1つのシステムインフラという従来型のシンプルな構成に比べ、新たに「仮想化層」が加わったことで管理する対象が増え運用管理が複雑化する、というのは仮想化のデメリットであることは間違いない。とはいえ、このデメリットは、仮想化に対応した運用管理ツールを使いこなすことで解決できるという。

新たなITアーキテクチャーの必要性

 現状のITアーキテクチャーには、さまざまな問題が生じている。それを解決する方法として、仮想化技術がいま注目されているのだ。TCOやROIの改善、変化するビジネスへの迅速かつ柔軟な対応、サービスレベルのさらなる向上といったビジネスの要求がある。これらを解決するには、増えすぎたITシステム資産をいかに効率的に運用し、新たな投資を最低限に抑え、迅速、柔軟に最大効果が得られるシステムを提供できるかが、新たなITシステムには求められている。

photo1 日本ヒューレット・パッカード マーケティング統括本部 インフラストラクチャソリューション本部 担当部長 小桧山淳一氏

 「HPの顧客状況を分析すると、企業のシステムリソースは平均で15〜20%程度しか利用されていない。さらに1つの企業の中で、使われていないものは数%程度なのに、過負荷なものでは100%に近い利用率となっている。余っているこのリソースをどう活用し、アンバランスな利用状況を改善できるかが課題だ」(小桧山氏)

 リソースの有効活用によるコスト削減という課題の解決方法が、仮想化だ。さらに、ビジネスの変化への迅速な対応にも、仮想化は1つの重要なステップとなる。変化に適応できるIT基盤を構築するには、4つのステップがある。第1ステップが、企業内のITシステムの標準化だ。そして、標準化をもとにシステムをシンプル化するのが第2ステップとなる。これらはバラバラだった管理状況を標準化し、整理して段階的にサーバやストレージなどのインフラを合理化、統合する過程だ。

 この段階を経て、仮想化によるリソース共有を行うのが第3ステップである。標準化したインフラのリソースをプール化し複数のサービスで共有する。プールからは、システム要求に応じて適宜リソースの供給が可能になる。この段階までくれば、仮想化によるITリソースの有効活用が実現する。

 さらに、仮想化された共有のリソースプールをより高度に活用する段階が、ユーティリティ化のステップだ。システムの需要に対するリソース供給を、人間が監視して切り替えるのではなくHP Virtual Server Environmentに含まれる機能などを活用し、システムが自律的に自動管理するのだ。これにより、ビジネスに必要なワークロードをシステムで動的に提供し、ITをサービスとして提供することが可能となる。これは仮想化の次に位置し、言い換えるならばグリッドの世界の実現だ。

さまざまな変化に柔軟に適応できるIT基盤は、上図のように4つのステップから成ると言える。仮想化の実現はあくまでこのステップの過程に過ぎないことを理解しておく必要がある

 グリッド世界を実現するには、従来の1つのアプリケーションに1つのシステムという垂直型のアーキテクチャーではうまくいかない。

 「調達なら調達、製造なら製造専用のハードウェアとアプリケーションという垂直型の構成ではリソースがシステムごとに固定化し、運用もバラバラな個別最適化された環境となる。今後は水平統合型で標準化された共通なインフラ基盤の上に、各アプリケーションが搭載される形が必要だ。これにより、全体最適化され効率的なリソース提供と運用管理、高いサービスレベルが提供できるようになる」(小桧山氏)

俗に言うサイロ型のシステムはすでに時代にそぐわない。標準化された共通なインフラ基盤を構築することが、サービスとしてのITには必要不可欠だ

データセンターの進化系

 仮想化技術を活用した水平統合型の新しいアーキテクチャーを用い、HPでは新たなデータセンターの姿を模索している。実際に自らをショウケースとし、大規模な変革を行っている最中なのだ。HP Integrityサーバと前述のHP Virtual Server Environmentの組み合わせによる劇的な改善を小桧山氏はこう話す。

 「現在HPでは、世界中に850カ所あったデータセンターを6カ所に集約している。これにより、2万数千台あったサーバは半数以下に統合され、稼働していたアプリケーションの数も大幅に削減される。これまでは、個々のデータセンターや部門で個別に運用されていたものを、IT部門がすべて掌握し一括で管理することでコストを大幅に削減する」(小桧山氏)

 コモディティ化するサーバやストレージの導入費用よりも、管理コスト増加のカーブの方がはるかに急激な上昇が予測されていた。これを解消するには、サーバの数を減らし運用管理工数を削減する。さらに、統合化を進める過程でシステムの標準化、モジュール化が実現され、企業のガバナンス面も強化されるのだ。

 HPでは、この新たなデータセンターの仕組みをサーバやストレージ、ネットワークといったハードウェアだけで実現するわけではない。仮想化により統合化された共通インフラの上で動くサービス部分についても、新たな取り組みが行われている。どのアプリケーションでも必須となるデータベースとJ2EEの実行環境を、SOA型のサービスとして柔軟に提供できるようにするのだ。

 「社内では、必要なときにOracleのインフラが使えるようになっている。新しいデータベースが欲しいときは、共有のリソースプールから必要に応じデータベースのリソースを切り出し、すぐにOracleの実行環境を割り当てることが可能だ」(小桧山氏)

 これは、ハードウェアインフラの仮想化とOracleグリッドで実現される。これらのITリソースのダイナミックな配分の仕組みは、HP IT Shared Service(HP IT共有サービス)と呼ばれ、デモ環境などの一時的な要求だけでなく、社内の基幹系アプリケーションの実行環境としてもリソースを適宜割り当てる形で利用されている。もちろん、役割を終え必要なくなったリソースは、随時解放され再びリソースプールに戻される。

 現状、HP IT Shared Serviceは社内向けのサービスだが、HPではこれを次世代のデータセンターソリューションとして顧客に提供する予定だ。

仮想化で新たに発生する要求に応える

 「コンプライアンスの観点からも、仮想化による統合はメリットが大きい。例えば、Oracleのグリッド技術による仮想化されたインフラ上に、複数の業務アプリケーションを搭載すると、IT全般統制で言及されている評価単位を減らすことができ、監査に伴うコストを低減できる」このように、仮想化による技術的なメリットだけでなく、水平統合型の新たなシステム構成の実現が内部統制確立にも有利だと説明するのは、日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 担当シニアマネジャーの北嶋伸安氏だ。さらに同氏は、仮想化によってシステムの統合が進めば、アプリケーション基盤に求められる信頼性はさらに高まるとも指摘する。

photo2 日本オラクル システム製品統括本部 営業推進部 担当シニアマネジャー 北嶋伸安氏

 「統合化された環境では、求められるシステムの信頼性/可用性は、より高度なものが求められる。ハードウェアはもちろんのこと、OS、データベース、ミドルウェア、アプリケーションで高い信頼性と可用性が実現できないと、業務の継続は不可能となる。さらに、複数のアプリケーションや重要なデータが1カ所に集約されるため、セキュリティリスクも高くなる。」(北嶋氏)

 つまり、複数のアプリケーションを仮想的な1台のシステムで稼働することになるため、どのアプリケーションの要求にも同時に応えられるリソースの有効利用と信頼性・可用性の両立が必要不可欠となるのだ。さらに、個々に対応すればよかったセキュリティ対策も、複数のアプリケーションを実行するために、きめ細かなアクセスコントロールやセキュリティリスク対策が求められる。Oracleが提供するさまざまなレベルでの暗号化機能や、管理者の権限までも制限できる詳細なアクセス制御を実現するDatabase Vault機能などが、ここでは威力を発揮する。

 単に複数のアプリケーションをサーバの仮想化技術だけで統合すると、場合によっては運用管理が複雑化しセキュリティリスクも高まってしまう。サーバの仮想化技術を補完し、より高度なレベルの統合環境を生み出すのが、Oracleグリッド技術と統合監視ツールOracle Enterprise Managerだという。

誤解しがちだが、仮想化とグリッドは相対するものではない。物理的に異なるハードウェアのリソースを統合できるOracle Grid技術はむしろ補完関係にあると言える

HPの仮想化とOracleのグリッドで実現するリファレンスアーキテクチャー

 「ITに求められているのは、もはや仮想化ではなく自動化」と、上述の小桧山氏は話す。仮想化とグリッドでユーティリティ化を実現し、ITシステムをサービスとして提供することが目指すべきものなのだ。そこでは仮想化もOracleグリッドもシステムの自動化を実現するための技術要素でしかない。

 しかし、自動化を実現し顧客に全体最適化されたシステムを実現するのはそれほど容易ではない。プールされるリソースの組み合わせにはさまざまなものがあり、どの要求にどのリソースを割り当てればいいかは、事前に十分検証する必要があるからだ。

 例えば、OLTPのシステムとデータウェアハウスでは、パフォーマンスに問題があった場合にどのリソースを追加すれば問題が解決するかは異なる。ストレージの性能を上げればいいのか、CPUを増やせばいいのかは状況によって違うからだ。さらに、従来に比べ、最近はより細かい単位でリソースを仮想化できる。ある要求に対しノード単位で追加すべきか、あるいはCPUのコア数を0.5だけ増やせばいいかでは、コストも手間も大きな差となる。コスト面でも最適な組み合わせを模索することも、顧客には重要なポイントとなる。

 「今後は、キャパシティアドバイザーの機能がより重要になる。どこにどのようなボトルネックがあるかで、対策方法は常に変化するからだ。より細かい粒度でリソースを自動配分できるかが重要になってくる」(小桧山氏)

 ユーザーが、自社の環境で複雑なリソースの組み合わせを試すことはそれに掛かる時間や費用を考えるととても現実的ではない。アプリケーションのボトルネックがどこにあるのか、リソースを柔軟に変化させたときにシステムの性能はどのように変化するのか。これらをベンダー側であらかじめきちんと検証しておくことで、顧客は安心して仮想化とグリッドの組み合わせを選択できることになる。

 「2006年11月に発表したOracle GRID Centerは、ベストなコンフィギュレーションを検証するための活動。ここは、単にHPのハードウェアの上でOracleのソフトウェアが仕様通りに動作することを確認する機能検証の場ではない。HPのサーバ仮想化とOracleグリッドの組み合わせのベストプラクティスを求めている。得られた結果は、具体的なリファレンスモデルとして顧客にどんどん提案していく」(北嶋氏)

 この現実的なリファレンスアーキテクチャーがあれば、検証済みということで顧客にとってもそれを提供するシステムプロバイダーにとってもメリットは大きいという。仮想化は、その導入が目的ではない。システム運用を自動化し、ユーティリティ化を実現する。そして、サービスとしてのITシステムの実現が本来の目的なのだ。そのためのベストプラクティスを提供するOracle GRID Centerの活動成果があれば、顧客はこの次世代データセンターソリューションの導入に、なんら不安を抱く必要はなくなるだろう。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年4月18日