仮想化技術の売り込みに動き出したNEC、日立、日本HP

NEC、日立、日本HPの3社は、HP-UX 11iを基盤として仮想化された環境で、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを動作検証し、リファレンスアーキテクチャーとして提供していくと発表した。

» 2006年06月27日 17時29分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 NEC、日立製作所、日本ヒューレット・パッカードの3社は6月27日、HP-UXをベースとした仮想化技術、「HP Virtual Server Environment」(HP-UX/VSE)によって仮想化された環境で3社のミドルウェアと主要なアプリケーションの組み合わせを動作検証する共同プロジェクトを開始することで合意した。

NECの山元氏、日本HPの松本氏と榎本氏、日立製作所の中村雅幸第三サーバ本部長

 NECと日立の両社は、Itanium 2プロセッサを搭載したHP IntegrityサーバのOEM供給を受け、それぞれNX7700i、およびHA8500として比較的大規模でミッションクリティカルなシステム向けに販売している。今回の共同プロジェクトは、オープンでミッションクリティカルな環境では実績ナンバーワンのHP-UX 11iを基盤とし、ミドルウェアやアプリケーションに至るまで、検証済みの統合化された構成をリファレンスアーキテクチャーとして提供することによって、仮想化システムのデザインや実装にかかる時間を約1/5まで短縮し、併せて品質も高めるのが狙い。

 都内のホテルで行われた記者会見で、日本HPでエンタープライズストレージ・サーバ統括本部長を務める松本芳武氏は、「数ある仮想化技術を組み合わせるのは複雑さを伴うが、だからといってベンダー固有の技術に戻ることはもはやない。国内主要ベンダーが名を連ねる今回の共同プロジェクトによって、オープンシステムの優れた水平分業をさらに推進したい」と話す。

体系化されつつあるHP-UXの仮想化技術

 ITインフラの成熟度を示すモデルとしては、最近、Gartnerが示したものが分かりやすい。標準化によって複雑さが抑えられると、次は物理的なサーバ統合によって規模の経済性を求める段階に入る。しかし、さらにコスト効果を高めていくためには、次の段階である仮想化、つまりリソースのプール化が欠かせなくない。

 「単にリソースを分割し、複数のOSインスタンスを生成するだけでは、ミッションクリティカルな環境には対応できない」と話すのは日本HPでビジネスクリティカルサーバ製品本部長を務める榎本敏之氏。単にパーティションの技術だけではなく、高い可用性を実現する機能、ポリシーに基づいてリソースを制御する機能、従量課金の機能などが不可欠だと指摘する。

 もちろん、HP Integrityサーバでは「マルチOS」を掲げ、WindowsやLinuxもサポートしているが、HP-UX/VSEのようにさまざまな仮想化技術が体系化されているわけではない。

 「先ずはHP-UX/VSEから」と榎本氏は話す。

NEC、日立のミドルウェアも動作検証

 米HPでもHP-UX 11iをベースとした仮想化のリファレンスアーキテクチャーの取り組みはすでに始まっている。BEA Systems、Oracle、SAS Institute、SAPが参加し、WebLogic ServerとOracle、WebSphereとOracle、SAPとOracleといった組み合わせを実証済みのリファレンススタックとして提供している。

 国内の3社による協業では、さらに各社のミドルウェアが加わる。NECにはクラスタソフトウェアの「CLUSTER PRO」、アプリケーションサーバの「WebOTX」、運用管理の「WebSAM」があり、また日立にもデータベースの「HiRDB」、アプリケーションサーバの「Cosminexus」、運用管理の「JP1」があるからだ。

 各社は検証センターを開設し、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、顧客が実際に導入するものに近いシステムで性能や信頼性の共同検証を進め、リファレンスアーキテクチャーとして提供していくという。

 自社のミドルウェア製品を検証済みのリファレンスとして売り込めることから、顧客からすると選択の余地が狭まる懸念もあるが、NECでコンピュータソフトウェア事業本部長を務める山元正人氏は、「各社のミドルウェアも動作検証され、その意味ではすべてが同じラインに並ぶ。むしろ、組み合わせが増えてくるので、3社が分担しながら検証を進めていく意義は大きい」と話す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ