第7回 ケータイ、PHS、それともイー・モバイル?(前編)再考・ワイヤレスネットワーク(1/3 ページ)

今、モバイルブロードバンド環境には、無線LANやPHS、そして新たにサービスを展開する「イー・モバイル」がある。果たして、これはビジネスモバイルの本命と言えるものなのか? ユーザーの目線で検証してみよう。

» 2007年05月30日 08時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]

連載「再考・ワイヤレスネットワーク」では、本記事を含む以下の記事を掲載しています。

【第1回】わたしがモバイルをしたくない理由

【第2回】なぜ、我が社には無線LANがない?

【第3回】「FONはビジネスに使えない?」の本当とウソ

【第4回】Skype専用携帯電話の「使える度」

【第5回】無線LANの高速化におカネはかからない?

【第6回】夢を先取り!? 移動体インターネットの使える度を検証

【第7回】携帯、PHS、それともイー・モバイル?[前編](本記事)


 企業にとって、社内外のシームレスなデータ通信は夢だ。多額の費用を投じて社内ネットワーク環境を整備しても、その恩恵は社内で仕事をするメンバーしか受けられない。営業担当者やフィールドエンジニア、毎日のように各地を飛び回るコーディネーターなど、1日の大半を社外で過ごすスタッフは、社内IT環境の“蚊帳の外”となってしまう。

 実際、ある新聞社に勤める知人は、営業活動や広告媒体制作のコーディネート、取材などで忙しく全国を飛び回っている。だが、いつもノートPCを持ち歩いているにもかかわらず、ほとんど有効活用されていないという。

何がモバイルブロードバンドを阻むのか

 ビジネスシーンにおけるモバイルブロードバンドの推進を阻んでいる要因は、コネクティビティーと通信速度の問題である。ノートPCを持ってオフィスから一歩外に出ると、そこはインターネットアクセスが極めて困難な世界。まさしく、オフィスからはIT的に隔絶した荒涼たる砂漠を歩むような状況だ。

 オフィス外でインターネットに接続する代表的な手段は3つある。(1)砂漠のオアシスのように存在する公衆無線LANスポット、(2)携帯電話キャリアが提供するデータ通信サービス、(3)PHSデータ通信サービスだ。この中からどれを選ぶかは、なかなか難しい問題と言える。

モバイルブロードバンドの主な手段とメリット/デメリット
接続手段 月額料金 通信速度 コネクティビティー 利用できる機能
無線LANスポット ○(1500円) ○(最大54Mbps) × ノートPCでできることのすべてが可能
携帯電話 △(定額で最大6000円程度) △(最大3.6Mbps) メール、Web(ノートPCの場合は別途通信カードとデータ通信サービスの契約が必要)
PHSデータ通信 △(定額で最大6000円程度) ×(最大256Kbps) 専用端末はWeb、メール、アプリケーションの利用が可能。またはデータ通信カード+ノートPC

 (1)はオフィスにいるときとまったく同じノートPC環境で、どこにいてもインターネットに接続できるが、スポットを探し回る面倒が生じる。一方、(2)(3)は、どこでもつながるが通信速度が限定される上、比較的通信コストが高い――といった具合だ。高速性と利便性、活用度の高さ、さらにリーズナブルなランニングコスト、これらをすべて備えた環境は残念ながらまだない。

スマートフォン、という新たな選択

 一部の大企業ではグループウェアとの連携や携帯電話によるソリューションの導入などを推進している事例はあるものの、現実問題として、SOHOや中堅企業ではそうした事例が非常に少ない。いずれにせよ、モバイルブロードバンドを活用しようとするなら、現実のインフラ環境や社内事情、社員のITスキルなどをしっかりと見極めた上で“モバイル”で何が実現されるのか、さらに、何を改善してどのように効率化するのか、といった方策を考えていかなければ投資効果は小さいだろう。

 現実のPCモバイルにはノウハウと努力が必要だ。例えば、営業部門の社員にノートPCと公衆無線LANサービスのアカウントを持たせ、連絡事項はすべてメールで行うようにルールを作り、かさむ一方の携帯電話コストを削減しようとしても、「無線LANスポットが見つからない」ので、結局携帯電話を使ってしまうという話を筆者は幾度となく聞いたものだ。

 もちろん、携帯電話なら誰でも簡単にメールやWebブラウジングができる。だが、携帯電話でビジネスメールをやり取りするのには限界があるし、いくらフルブラウザ搭載機が増えたとはいえ、本格的なWebブラウジングも厳しい。しかもパケット定額制を契約していても、フルに使えば利用料が月額5000円前後と、まだまだ高い。

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