第1回 わたしがモバイルをしたくない理由再考・ワイヤレスネットワーク(1/2 ページ)

「ビジネスで使う内外の無線LAN環境」を再考する連載――。公衆無線LANサービスが日本で始まってからもう6年。事業者やサービスの数は増えたが、肝心のユーザーの伸びは今ひとつだ。一体、何が問題なのだろう?

» 2007年04月20日 08時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]

連載「再考・ワイヤレスネットワーク」では、本記事を含む以下の記事を掲載しています。

【第1回】わたしがモバイルをしたくない理由(本記事)

【第2回】なぜ、我が社には無線LANがない?

【第3回】「FONはビジネスに使えない?」の本当とウソ

【第4回】Skype専用携帯電話の「使える度」

【第5回】無線LANの高速化におカネはかからない?

【第6回】夢を先取り!? 移動体インターネットの使える度をチェック


 公衆無線LANサービスのアクセスポイント(AP)は日本全国に広がっている。そして市販のノートPCのほとんどはワイヤレス対応だ。だが、都心の公衆無線LANサービスの場所に足を踏み入れても、いつもノートPCを使っている人の数はまばらである。無線LANが使える駅構内に至っては、ノートPCを開けている人をめったに見ることはない。

 少々古いデータになるが、2006年4月の米JupiterResearchのレポートによると、公衆無線LANの利用者は2004年の14%から2005年は20%に増加しているが、公衆無線LANユーザーのうち58%は無料のサービスのみを利用すると回答している(関連記事参照)。これはどうしてだろう?

無線LANサービスが抱える2つの問題

 筆者のオフィスはVPN(仮想閉域網)環境を整え、PPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)による外部からのリモートアクセスに対応している。サーバ環境も整備してあり、VPN接続さえできればどんな場所にいても事務所内のデータがすぐに取り出せるようになっている。

 しかし、以前契約していた公衆無線LANサービスでは、なぜかVPNセッションが頻繁に切れてしまい、軽めのファイルコピーすらままならなかった。同じサービスを契約する職場の同僚に声をかけ、別のAPから同様にアクセスしてもらったが、やはりVPN接続して数分でセッションが途切れてしまった。

 モバイル事情に詳しい知人の話では、APによってはVPNが使えないことがあるという。今やビジネスユースにおいてリモートアクセス環境は必須なだけに困ったものだ。また、ネットワーク機器の障害に出くわすこともしばしばあった。もちろんAPをメンテナンスするスタッフは常駐していない。コネクティビティーでつまづくようでは、ネットワークの品質以前の大問題である。

 現状の公衆無線LANサービスのもう1つの問題は、「どこで使えるのか分かりにくい」ということだ。公衆無線LANのスポットは当然ながら事業者によって異なる。この状況は、NTT系の「ホットスポット/MZone」と「BBモバイルポイント」とのローミングサービスで改善されたが、別途追加料金が必要だ。また、事業者横断的な情報を得ることが難しいという問題もある。

図1 ホットスポットのサービスエリア検索画面(クリックで拡大)。店舗名と住所のリスト表示が基本で、1つずつ場所を確認する必要がある。すべてを地図上にマッピングしてくれたらもっと便利なのだが……

 また、ひとたび契約しても「事前にAPの場所をプリントアウトして持ち歩く」というアナログチックな事前準備も必要だ。いつも決まった場所を移動するならさほど困らないだろうが、行き先がまちまちな営業マンにはつらいだろう。もし、プリントを忘れて外出してしまったらお手上げだ。

代表的な公衆無線LANサービス
サービス名 事業者 AP数 代表的なスポット 料金
ホットスポット NTTコミュニケーションズ 約3500 空港、ホテル、駅、ファーストフード店(モスバーガーなど)、カフェ(タリーズコーヒーなど) 1680円/月、ワンデイパスポート:500円/日。BBモバイルポイントも利用する場合、定額利用者は月額819円が追加
Mzone NTTドコモ 約4700 空港、ホテル、駅、一部の高速道路パーキングエリア、ファーストフード店(ロッテリア、ケンタッキーフライドチキン)、カフェ(タリーズコーヒー、プロントなど) 1575円/月、日額プランは525円/日。BBモバイルポイントも利用する場合、定額利用者は月額525円が追加
BBモバイルポイント ソフトバンクテレコム 約3500 空港、ホテル、駅、ファーストフード店(マグドナルド、カフェ(カフェ・ルノアール)など Yahoo!BBユーザーは304円/月、その他ローミングを含めてプロバイダーによって料金が異なる
livedoor Wireless ライブドア 約2200 東京首都圏(山手線圏内の80%)、カフェなど 525円/月

 さらに、各事業者が提供するエリア情報は基本的にリスト表示であり、1つずつ地図で場所を調べる必要がある。公衆無線LANの理想はユビキタスだが、現実にはAPを求めてさまよい歩く、といった本末転倒な状況は2007年も依然として変わっていない。これでは筆者ならずとも本格的なモバイルコンピューティングを実践したくなくなるのも無理はないだろう。

 現状の公衆無線LANの問題点を以下に挙げてみる。主にクオリティと非ユビキタス性に起因するものだ。

  • 接続品質の問題(VPNが使えない、コネクションが途切れるなど)
  • サービス品質の問題(故障などのメンテナンスが迅速に行われない)
  • AP検索性の問題(横断的に検索できない、移動中はインターネットを使えない)
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