このような状況に風穴を開けたのが「スマートフォン」という存在だ。2005年12月に発売されたウィルコムの「W-ZERO3」は、日本にスマートフォンブームを巻き起こした金字塔のような製品である。マイクロソフトの携帯デバイス向け汎用OS、Windows Mobile 5を搭載し、メールやWebはもちろん、スケジューラやアドレス帳アプリケーションやMicrosoft Officeアプリケーションが利用できるという、ビジネスケータイとして画期的な製品だ。
データ通信については、無線LANにも対応しているが、屋外では主にウィルコムが提供するPHS網を使う。PHSの電波が届く場所であれば、携帯電話とほぼ同じ感覚でどこでもネット接続ができる。ただし、難点はPHSの通信速度が遅いことだ。
PHSは基本的に64Kbps/128Kbps、もしくは256Kbpsであり、いずれも最大リンクアップ速度であって実効値ではない。電波状況によって速度が低下するため、場所によってはかなり遅くなる。ちなみに、筆者が10MBのファイルをFTPでダウンロードしたときの速度は「4xモード(128Kbps)」時で19分30秒(およそ72Kbps)だった。ちなみに光回線が入った筆者のオフィスでは、ものの10秒で転送できる。その差はあまりにも大きい。
W-ZERO3はWindows OSのサブセット版としてビジネスで使うための一通りの機能を持っているが、日ごろ快適なブロードバンド環境に慣れた営業スタッフがWebベースの情報アクセスを行ったり、大きめのサイズの添付ファイルを受信するのは少々難があるかもしれない。
知人の勤務する会社では、最近会社にW-ZERO3を全面的に導入した。いろいろと話を聞いてみると「Webアクセスは本当に遅い。でも、これまで携帯電話でやり取りしていた連絡事項をメールで行えるようになったのは大きな進歩だった。なにしろ、ウチの会社は年配の営業マンも多く、メールをほとんど使わない人が多かったから」という。
W-ZERO3はQWERTY配列のキーボードを備え、携帯電話のメールが苦手でもPCが操作できるなら違和感なくメールが作成できる。屋外ではテキストメール中心で使い、Webやデータ転送は自宅や社内のワイヤレスアクセス/公衆無線LANスポット、といった活用法が適していると考えられる。
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