ICT時代のビジネスモデル実現に向け、アイルランドのトップ企業が集合(2/2 ページ)

» 2007年08月01日 15時10分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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パワー氏

 トランザクション管理サービスを手がけるOpenetアジア地区営業担当取締役のアメリア・パワー氏は、「通話料金やコンテンツ購入などのトランザクションをリアルタイムに管理することで、通信事業者はARPU(ユーザー単価)を向上できる」と話す。

 同社は「FusionWorks Platform」というネットワークでの商取引状況を監視するプラットフォーム製品群をAT&TやBristh Telecomなどへ提供する。このプラットフォームを利用して、ユーザーの与信や課金・決済などの状況をリアルタイムに把握できるという。

 例えばリトアニアの携帯電話事業者OMITELは、プリペイド携帯電話ユーザーの管理にこのプラットフォームを導入し、利用頻度や期間に応じたポイント制度を構築。「2ポイントで1週間無料」といった獲得ポイントに応じた特典がプリペイドサービスユーザーの利用促進につながり、「実行可能なARPU向上のための戦略を策定して収益を向上させた」とパワー氏は述べた。

ホームズ氏

 ダブリン大学発のベンチャー企業Changingworldsは、人口知能技術を利用してユーザーごとに最適化された携帯電話インターネットのポータル画面表示を可能にするサービスをVodafoneなどに提供する。ユーザーが目的の情報へたどり着くまでのクリック遷移を分析することで、携帯電話インターネットにアクセスした際にユーザーが嗜好する情報だけを集めたポータル画面を携帯事業者は提供できる。

 同社アジアパシフィック担当ディレクターのマリ・ホームズ氏は、「ユーザーは12クリック以内に目的の情報へたどり着くことを望んでいるが、実際には21クリックを要していることが当社の調査で判明した。実にモバイルコンテンツの75%がターゲットユーザーをきちんと獲得できていない」と、携帯電話インターネットの課題を紹介した。

 ホームズ氏は、小さな画面サイズや入力操作などの制約が多い携帯電話インターネットには、ユーザーごとにカスタマイズされた情報ポータルが重要だと指摘。さらにはカスタマイズ情報を基にした広告も可能になるため、「収益性の高いモバイルのビジネスモデルを実現できるだろう」と話した。

ドイル氏

 AranTechは、メールなどのユーザーサービスの利用状況に基づいた効率的なネットワーク運用の支援を通信事業者向けに提供する。同社副社長のジェームズ・ドイル氏は、「ネットワークやシステムの稼働状況だけでなく、ユーザーのサービス利用実態に注目してネットワークの運用効率を高めるコンサルティングを提供する」と話す。

 ある通信事業者の例では、MMS(マルチメディアメッセージング)利用の約3割で安定してメッセージを送信または受信されないという問題が明らかになり、AranTechではシステムの改善やユーザーに再送信を促がす通知を行うなどの対策を事業者にアドバイスして改善を促がしたという。この結果、MMSサービスの利用効率が高まり、ARPUも向上したという。

 ドイル氏は、「ユーザーがサービスを利用し始めた段階から毎回の利用状況、利用を停止するまでのすべてのタイミングで情報を把握する。これによってサービス自体のライフサイクルが分かるため、サービスが計画された段階から終了されるまでに必要なネットワークの運用方法について幅広く支援できる」と同社サービスの特徴を説明した。

NGN対応は分散型SOAで

江川氏

 日本アイオナテクノロジーズテクニカルセールスマネジャーの江川潔氏は、「分散型のSOA(サービス指向アーキテクチャ)を利用して、NGNに対応するシンプルなネットワーク環境を構築すべきだろう」と話した。

 NGNのサービスは、NTTグループが東京と大阪で実証実験を進めているが具体的なサービス内容については検討中で、サービス開始時期も2007年度下期とされている。また、NTTグループの中期経営計画では2010年度末までに3000万件の光ファイバ加入が目標に掲げられているが、NGNベースのサービスが目標達成の原動力の1つになるとみられる。

 「NGNに対応するBSS/OSS(Operation Support System/Business Support System)の構築に、時間やコストをあまり掛けることができないというのが企業の実情だろう。J2EEなどを利用して既存の環境をNGNに合わせるようにもできるが、複雑なシステム環境をNGN時代にも引き継ぐことになる」(江川氏)

 同社はCORBAベースのESB製品を長年手がけているが、ESBを利用することによってシンプルな分散型のSOAインフラを最小限のコストで短期間に構築できるという。最後に江川氏は、「NGNの実用化が目前にせまるが、このタイミングで現在のインフラ環境をぜひ見直してほしい」と締めくくった。

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