そのPCを本社に送ってもらい、改めて管理部門の部屋で調査を始めた。Windowsの設定は何も間違っていない。何しろ、社内ではコンピュータオタクと名高いA氏がさじを投げたPCである。きっと原因はハードウェアだろうと、ネットワークカードを交換したり、最後にはマザーボードまで交換してみたりしたが、問題は解決しない。のべ4日間、延々と調査したにもかかわらず、原因が分からないのだ。結局、購入したハードウェア代金は4万円近くにもなってしまった。
仕方がない。クリーンインストールでもして、もう1度テストしてみるかと思ったそのとき、F氏は、見慣れないソフトがインストールされていることにふと気がついた。それは、比較的安価に手に入るウイルス対策ソフトだった。試しにそのソフトをアンインストールしてみると、何事もなかったかのようにマシンは復帰し、サーバに接続できるようになったのだ。F氏は一気に体の力が抜けた。4日間の苦労と出費は何だったのか?
ともかく、F氏はそのPCを東京のオフィスに送り返し、A氏には「セキュリティソフトの中にはこのような事態を引き起こすものもあるので、インストールする際は注意してくださいね」と忠告したのだが、ソフトの選定自体は現状、A氏に任せている。F氏は「また、同じようなことが起こらないといいが」と思ったが、その懸念は的中した。
しばらくして、またA氏から電話が入った。今度は別のPCがネットワークにつながらない状態で、OSやソフトの動作も不安定だという。F氏は「またか」と思ったが、今はもうA氏を過信せず、ソフトウェアの問題から調べ始めた。程なく、あるソフトがコンフリクトを起こしていたことを突き止めたのだった。
さすがにF氏は考え始めた。確かにA氏に任せていればマシンの購入費用は抑えられるし、運用も一見うまくいっているように見える。しかし、うまくいっていたのは、単に運が良かっただけだった。自作PCはメーカーサポートが一切受けられない。ほかの拠点では、担当者がメーカーと直接やり取りし、本社の管理部門が動かなくても問題は解決するが、自作ではそうはいかない。考えてみれば、4万円あればたいていの問題は解決するはずだ。
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