もし、このような拠点が増えたら、どうなるのか。PCに詳しい人を配置して、好きなように管理させることは、結局は自分たちの首を絞めることじゃないのかとF氏は思い始めた。今の体制では、まさにPCオタクの天下となり、問題のツケはすべて自分たちに返ってくる。少なくとも、自作PCで運用させることはすぐに止めさせたい、とF氏は思った。
コンピュータ好きの社員は好奇心や探求心が旺盛で、斬新な運用方法を生み出すことがある。しかし、時として判断を誤ることもある。“好き”なだけでは、ITシステムの円滑な運用や十分な管理ができるわけではない。業務を止めず、円滑に運用するのが運用管理の鉄則であり、本来は、業務に最適なマシンやソフトの選定は、管理部門主導で行うべきなのだ。会社が求めているのは、斬新でユニークなIT環境ではなく、トラブルなく安定して動くシステムなのだ。
今、F氏は情報管理部門全体で、この問題を検討するに至った。これまでのように「PCに詳しい」というだけで、簡単に担当者にするのではなく、ある程度ITの知識がある人を管理担当候補に据え、管理部門主導で運用管理の基本的な指導を行う、という基本的な道筋ができつつある。
また、きちんと運用管理マニュアルを作成し、PCの基本的な運用方法をガイドラインに沿って実践してもらう。そして、できるだけ地方を回り、担当者と意見交換したり、ガイドラインの周知徹底を促すといった活動も行おうとF氏は決めた。すべてを実現するのはすぐには難しそうだが、役職の上下関係といったしがらみやPC趣味色を排し、理想的な管理体制に近づけていく考えだ。
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