携帯電話から文化を創出したい――ケータイ恋愛ゲームの舞台ウラ突撃!隣の情報システム

携帯電話で提供される女性向け恋愛ゲーム。その舞台ウラでも、しっかりとITが仕事をしている。

» 2007年09月04日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]

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 「現状の携帯電話ゲームを見ると、“テトリス”や“ドラクエ”など既存コンテンツの移植や焼き直しが中心です。携帯であることを活用しているゲームがないなあ、と感じていました」と話すのは、セレンディピティの有馬あきこ社長。同社では、携帯電話特化型の恋愛シミュレーションゲームやノベルゲームを提供している。

 携帯電話特化型とはどのようなことか。有馬社長によれば「自分の携帯電話の向こうにキャラクターが見えること。そのキャラクターと対話(通話)できること」を意識しているという。

 また、例えば現在の音楽市場では、CDでリリースされた楽曲が二次的に“着うた”や“着メロ”として提供されるのが主流である。同社もCDをリリースしたり、ゲームをアニメ化し、テレビ放映からDVD販売へとつなげたりしているが、いずれも「まず携帯電話でのお披露目が先。曲も、ゲーム内でキャラクターが歌ったものを、後でCD化する」(有馬社長)という。

セレンディピティ 有馬あきこ社長

 同社の提供する携帯電話特化型ゲームでは、IVR(音声自動応答)を応用することで、ゲームに登場するキャラクターと、携帯電話を通じ会話することができる(実際に着信が入る)。例えば、仕事を終え帰宅したころにキャラクターから着信があり、「お帰り。仕事大変だったね」といった音声が入る。ユーザーはそれに対し、「はい」や「いいえ」、あるいはもっと自然な言葉で応答することで、さらに会話が広がるという仕組みである(キャラクターからのメッセージに対し無言で応えた場合、IVRは“否定的”と認識する)。これにより、テキストベースで紙芝居のように進行する従来型のゲームよりも、ユーザーにとっての臨場感やインタラクティブ性が増すことになる。

女性向け恋愛シミュレーションゲーム「マージナルプリンス」のプレイ画面。画面内のキャラクターと実際に会話できる。各キャラクターのボイスは、有名声優が担当している。

 一般に家庭用ゲーム機は、携帯電話よりもリッチなゲームプラットフォームだと思われているが、このような仕組みは実現困難である(オンライン対戦は可能だが、家庭用ゲーム機は電話機ではないので、「恋人や友人との電話」を体感できない)。まさに携帯電話ならではのゲーム性と言えるだろう。

マージナルプリンスのシステムイメージ

 ゲーム内のキャラクターとユーザーとの通話を実現するシステムとして白羽の矢を立てたのが、NTTコミュニケーションズのIVRサービス、Vポータルだ。

 通常IVRは、顧客の問い合わせに対応するコンタクトセンターなどで利用されることが多いソリューションである。それをゲームという領域に持ち込むのは、ある意味、特異な使い方にも感じられる。

 だが有馬社長にとっては、この選択は必然だったという。

 「携帯電話特化型をうたう以上、キャラクターとの通話は当たり前。しかし、実際に声優が電話口で対応するのは不可能です。そこで企画段階からIVRの利用を前提とし、NTTコミュニケーションズと仕様を詰めました。私たちが提供するコンテンツは、まず“システムありき”とも言えます」(有馬社長)

 Vポータルを採用した理由として、有馬社長は音声認識率の高さを挙げる。Vポータルは固定電話との通話に関し、98%の日本語認識率を誇るという。

 「電話機ごとに動作確認を行う必要があったり、キャリア公式コンテンツとして認可されるハードルが高かったりといった点は、コンテンツベンダーにとって負担が大きい」と、携帯電話というコンテンツプラットフォームの問題点も指摘する有馬社長だが、同時に「携帯からはじまる文化の創出を目指したい」とした。

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