NEROゲームがバージョン2.0への進化を達成集え、戦略家(3/3 ページ)

» 2007年09月29日 01時30分 公開
[Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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新出した問題点

 わたしはこの新バージョンについて、テリトリーコントロールの対戦に関するヒントを解説できるほどやり込んではいない。もっとも、今回新たに発生した問題点について幾つか確認しているので、その点を説明しておこう。

 その1番目だが、NERO 1.xにおいては対戦画面上で敵と味方を区別しやすくするため、両軍のロボットを異なるモデルで描画する、攻撃時の砲煙を異なる色で表現する、各ロボットごとに明るいリングを表示させ移動時にも追跡するようにしておくという3種類の措置が取られていた(いずれの表示も、各陣営ごとにブルー系とレッド系の配色で統一)。

 NERO 2.0では、各個体を目立たせるためのリング表示が廃止されたため、対戦時の識別が行いにくくなっており、目を凝らさないと見分けがつかないくらいだ。この問題から生じるフラストレーションは、テリトリーコントロールの対戦においては倍増することになる。それというのも、ロボットの量産はコントロールポイントのクリックで実行できるのだが、どちらの陣営が占領しているかはズームインしないと確認できず、またコントロールポイントを操作するには再度ズームアウトさせる必要があるからだ。いずれにせよ個体識別用のリング表示は、ユーザー設定可能なオプションにしてもらいたいところである。

 2番目の問題は、カメラコントロールに柔軟性がない点である。視点移動は一般的なw-a-s-dキーに割り当てられているが、これは水平方向の移動だけで、上および下方向の移動はできない。もっともmキーを押してマウスビューに切り替えれば、上と下方向からの俯瞰とwおよびsキーによる移動ができるようになる。実際、移動するだけならマウスモードの方が楽なのだが、このモードではオブジェクトにアクセスできないため、テリトリーコントロールモードでの対戦で使うには非常に不便である。

 こうした不備はトレーニングモードでも顕在化している。ここでもオブジェクトが区別しにくいためズームインする必要があり、また見下ろす位置によっては一部のトレーニング情報にアクセスできなくなるのだ。例えば、現在のトレーニング成績はID番号別で示され、各ロボットのID番号はスペースキーを押すことで表示できるのだが、こうしたID番号もある程度ズームインしないと識別できないため、トレーニングの進捗を確認するには頻繁にポーズをかけてズームインとズームアウトを繰り返すことになる。

オープンソース化に向けての動き

 こうしたID番号表示の問題は純然たるバグであって、デザイン上の仕様などではないだろう。こうした問題も仮にNEROのコードがオープンソース化されていれば、次のリリースまで待つことなく即座に改善されていたはずである。この件に関しては、明るい展望を予感させるニュースが流れている。

 NEROの人工知能部を司っているアルゴリズムについては現状でもソースコードが入手可能であり、同ゲームの残り部分についても、開発陣は以前よりオープンソース化を歓迎するという発言をしている。それを妨げている最大の障壁は、同ゲームの根幹を成しているプロプライエタリ系のTorqueエンジンの存在である。

 そしてこの夏にNERO開発陣の一部グループが手掛け始めたのが、NERO 2.0のオープンソース版クローン作成であり、これは非公式にOpenNEROと呼ばれている。現状での進捗状況はソースコードを一般公開できるレベルまでは進んでいないそうだが、今後OpenNEROが目指す方向についての概略はリリースされている。

 初期目標として掲げられているのは、オープンソース版のゲームエンジンを用意して既存NEROのクローンを作成することである。その次の目標はゲームの人工知能部を入れ換え可能にして、異なる学習モジュール間での競争を実現することだとされている。

 プログラマーの1人であるイゴール・カルポフ氏は「最初のステップはNERO 2.0の主要なコア機能の再構成をすることですが、その次はより一般化を進めて、現行のNERO/NEATだけではなくさまざまなAIメソッドを搭載したバリエーションを作成できるようにしたいですね」と説明している。もう1人のプログラマーであるジョン・シェブラック氏がNEROフォーラムのコミュニティーで語っているのは、対戦モードをユーザーレベルでデザインできるようにしたいという構想である。

 NEROファン待望のこうしたオープンソース版ゲームのリリースは、実現するとしてもしばらく先の話になるだろう。同ゲームの開発陣は、その多くが現役の大学生であるが、現在この構想を実現するために鋭意作業を進めているところである。またゲームのソースコードが公開された暁には、外部から多量の支援を得られることになるのは間違いないはずだ。

 当座は、NERO 2.0で新たな対戦モードが追加されたことが、Linux用ゲームのプレーヤーにとっての恩恵でもあることに満足しておこう。

 NEROのようなタイプの対戦ゲームのいったい何が面白いのかさっぱり理解できないという方もおられるかもしれないが、これ以上の思考力を要求される対戦ゲームというのもざらには存在しないはずである。自分は一線級の戦略家であると自認しているゲーマーであれば、NERO上でその腕前を試してみることで、このゲームの完成度を実感できるはずだ。

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