カナダの10大学、CERNデータ解析にIBMのスーパーコンピュータ活用

欧州のCERNプロジェクトで生成される膨大なデータを解析するため、IBMのスーパーコンピュータクラスタを活用する。

» 2007年10月19日 16時12分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 カナダの10大学が、IBMのスーパーコンピュータクラスタを活用することになった。スイスのCERN(欧州原子核研究機構)のATLASプロジェクトで2008年に粒子加速器「Large Hadron Collider」(LHC)が始動するのに伴い、予想される膨大な量のデータ保存と解析に役立てるためだ。

 この10大学の研究者はいずれもこのプロジェクトに参加している。これはLHCからの生の情報を使って陽子衝突を調べ、ヒグス粒子を探し出すプロジェクト。ヒグス粒子はまだ発見されていないが、その存在が証明されれば、なぜ電子の負荷はマイナスで、陽子はプラスなのかといった、素粒子の基本的な性質を解明する手掛かりとなる。

 情報集積のためにカナダの大学とIBMは、IBMのスーパーコンピュータ「System Cluster 1350」を利用。DCS9550 Storage Systemを搭載し、最大320台のHDDをサポート、計160テラバイトの物理ストレージを備える。このIBMクラスタはバンクーバーにある国立素粒子物理学研究所のサイクロトロン実験施設、TRIUMFに設置される。

 IBMは世界有数のスーパーコンピュータメーカー。米エネルギー省ローレンスリバモア研究所にある世界最速の「Blue Gene/L」をはじめ、6月現在で世界のスーパーコンピュータの60%はIBM製となっている。

 スーパーコンピュータを使っているのはほとんど研究施設に限られるが、IBMは経験を生かし、大企業や中堅企業の間でもこのようなマシンの需要を掘り起こすことを目指している。

 IBMなどの各社は、クラスタとスーパーコンピュータの価格を引き下げ、マシンの操作性と企業にとっての魅力を高める狙いで、IntelやAMDのx86プロセッサとLinuxやMicrosoft WindowsといったOSをクラスタに利用し始めている。

 バンクーバーのIBMクラスタは、CERNプロジェクトの結果分析に使われている別のスーパーコンピュータのグリッドと接続される予定だ。LHCと組んだ初の本格実験は2008年5月に始まる見通し。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

注目のテーマ