ジュネーブにある有名研究所、CERN(欧州原子核研究機構)の大型ハドロンコライダーがもし素粒子物理学の分野で輝かしい発見を生み出すようになるとすれば、グリッドコンピューティングの分野でもちょっとした奇跡が必要かもしれない。
商用ベンダー製の適切なツールが存在しないことから同研究所のエンジニアは、このコライダーが2007年半ばに運用を開始した時点で予想される膨大なデータを保存・処理するため、巨大グリッドの構築に当たっている。先日の発表によれば、このコンピューティングネットワークは現在31カ国の100カ所以上を網羅、世界最大の国際科学グリッドになっているという。
コライダー内部では、それぞれ反対方向に放射される光子線を強力な電力を使って光速に近い速度まで加速し、相互に衝突させる。科学者たちは衝突のデータを分析して新しい素粒子を発見し、素粒子がなぜ質量を持っているのかといった謎の解明に近づくとともに、この世界の原理について理解を深めたい考えだ。
陽子の衝突により、年間推定15テラバイト(1500万Gバイト以上)のデータが生成される。グリッドの役割は、コンピューティングとストレージシステムの巨大ネットワークをつなぎ合わせ、科学者が必要なときにデータと処理能力を利用できるようにすることにある。
グリッドは大部分が大学や研究所を拠点とし、日本やカナダなどのほか、Hewlett-Packard(HP)のデータセンター2カ所などが含まれる。各拠点から、総計1万個以上のプロセッサと数億Gバイト分のテープ/ディスクストレージによるコンピュータ処理能力を提供している。
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