Citrixが発表した「XenDesktop」は何をもたらすか?Citrix iForum 07 App Delivery Expo Report

Citrix iForum 07 App Delivery Expoの2日目のキーノートで、XenSourceのCEOであったピーター・レバイン氏は、アプリケーションとデスクトップを分離させる意義を説き、そのための製品を披露した。

» 2007年10月26日 07時50分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 Citrix Systemsがネバダ州ラスベガスで開催している年次カンファレンス「Citrix iForum 07 App Delivery Expo」で来年第1四半期のリリースが発表された「Citrix XenDesktop」。Citrixが買収を完了したXenSourceがもともと製品として持っていたものが名を変えた「Citrix XenServer」とは異なり、新しい製品ラインアップとなる。

 CitrixがXenSourceの買収を完了したことで、XenSourceは今後、Citrixのバーチャライゼーション&マネージメント部門としてビジネスを展開するが、同部門を率いるのが、XenSourceのCEOであったピーター・レバイン氏である。

 同カンファレンスの2日目のキーノートを務めたのは、CitrixのシニアバイスプレジデントでCMO(最高マーケティング責任者)のウェス・ワッソン氏。同氏はピーター・レバイン氏とともにCitrixの仮想化戦略について説明した。

ワッソン氏 仮想化関係ということで、セカンドライフから冒頭のあいさつを行うワッソン氏

 初日の基調講演でテンプルトンCEOがアプリケーション配信を実現する3つの方向性――すべてのアプリケーションをサービスとして提供すること、データセンターをダイナミック(動的)なものにすること、デスクトップ環境をサービスとして提供すること――の話を引き継ぐ形で、デスクトップ環境、アプリケーション、データセンターとそれぞれを仮想化することこそが、真の意味でリソースを有効に活用でき、変化に柔軟に対応できるシステムになるのだとワッソン氏は話す。

ワッソン氏 「これからの10年はアプリケーションデリバリーこそが重要なのだ」とワッソン氏

Citrix XenDesktop

 講演の中では「Citrix XenDesktop」についての説明がデモを交えて行われた。同製品はXenの名を冠するものの、サーバの仮想化を実現する「Citrix XenServer」とは異なり、直接的にXenの技術が使われているわけではない。Citrix XenServerやArdenceを買収したことで手に入れたOS/アプリケーション/データ配信のソフトウエア「Citrix Provisioning Server」と連携することで最高のユーザー体験が得られるとレバイン氏は話す。

後のグループインタビューでは、KVM(Kernel-based Virtual Machine)について、「XenはKVMのはるか先を行っている。LinuxオリエンテッドなKVMに対し、プラットフォームをしないXenはファンダメンタルな部分からして異なるので、当面Citrixのビジネスに影響を与えることはないだろう」とレバイン氏

 デスクトップ環境のデリバリーを提供するという同製品は、Citrixが現在「Citrix Desktop Server」(CDS)として提供(日本国内では未提供)している製品の延長線上にある。CDSともっとも大きく異なるのは、ICAプロトコルが用いられる範囲のようだ。

 CDSでは、ICAで通信するのは、CDSとクライアント間であり、デリバリーするOSが存在するサーバとはRDP(Remote Desktop Protocol)接続であった。これがCitrix XenDesktopではすべての通信がICAで行われるという。

 デモでは、XencenterでOSイメージを作成し、それをWyseのクライアント端末にデリバリー、さらにアプリケーションをCitrix Presentation Serverがデリバリーする様子が示された。アプリケーションとデスクトップ環境を分離させ、ユーザーに対し、必要に応じてOSレベルでのデリバリーも可能になったことを強調した格好だ。

 「アプリケーションとデスクトップは分けておく必要があると考えている」(レバイン氏)

XenServerとXen Projectの今後

 また、Citrix XenServerについても、実行中の仮想マシンを物理サーバ間で動的に移動させるライブマイグレーション技術「XenMotion」などのデモが披露された。

 XenAPIをオープンなものにすることによるISVパートナーとの連携はもちろんのこと、可用性を高めるHA機能の実装なども推進するという。買収される前となる2007年7月に、XenSourceはSymantecとのOEM提携を発表しているが、ストレージの仮想化も含め、このあたりの成果は2008年に登場するであろうことをにおわせた。

 「Citrix Presentation Serverのチームと同じテーブルで話してみると、Xensource時代では考えつかなかった魔法のようなことが可能になることも分かった。来年はさらに革新的なものになっていくだろう」(レバイン氏)

 また、XenServerのコアエンジンとなっているオープンソースソフトウェアの「Xen」を開発するXen Projectについて、同プロジェクトのリーダーであるイアン・プラット氏は現在、Citrixに籍を置くなど、CitrixとXen Projectの関係は強固なものがある。IBMがEclipseでそうしたように、Xen Projectと独立させた非営利組織などにする気はあるかという質問に、レバイン氏は、CitirxがXen.orgのアドバイザリボードに加わるつもりであることを明かしたが、そのほかについては「将来的には(Xenが)Eclipseのようになるかもしれない」と答えるにとどめた。

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