マルチコア用自動並列コンパイラの開発を支えるデスクサイドスパコン

1980年代からソフトウェア協調型マルチプロセッサアーキテクチャの研究を進める早稲田大学。そのマルチコア用自動並列コンパイラの研究開発に取り組む笠原研究室では、机の下に日本SGIのスパコンが鎮座している。

» 2008年01月15日 01時13分 公開
[ITmedia]

 NECのベクトル型スーパーコンピュータ「HPCサーバ SX-8i」Orion Multisystemsの96ノードクラスタ型ワークステーション「Orion DS-96」のように、デスクサイド型のスパコンは2年ほど前に幾つかのベンダーから相次いでリリースされた。使い勝手やなどの面でパーソナルなスパコンのニーズは少なかったのかこれらの製品はそれほど普及することなく2年が過ぎた。

 そんな中、2007年末に早稲田大学の笠原研究室に、日本SGIが「SGI Altix 450」のデスクサイド型特別モデルを3セット納入、同研究室は運用を開始しているという。

 1986年からOSCAR(Optimally Scheduled Advanced Multiprocessor)と呼ばれるソフトウェア協調型マルチプロセッサアーキテクチャの研究を進めている早稲田大学。笠原博徳教授率いる笠原研究室では、並列化コンパイラ協調型「OSCARマルチコアアーキテクチャ」の研究開発に取り組んでおり、商用コンパイラと比べても高い性能を持つマルチコア用自動並列コンパイラを開発するなどしている。

 OSCARコンパイラにおける分散共有メモリ最適化技術の開発、およびコンパイラが自動生成した並列プログラムをマルチコアアーキテクチャ上で動作検証する目的で新たなシステムの導入を検討していた同研究室では、OSCARマルチコアアーキテクチャやコンパイラと技術的な相性がよい分散共有メモリ型アーキテクチャ「cc-NUMA」に対応したソリューションを持つ日本SGI製品の導入を検討していた。加えて、新システムを各学生用コンピュータデスクの下に設置したいと要望を出していた。

 日本SGIはこの要望に対し、ブレードサーバで構成されるミッドレンジサーバ「Altix 450」を特別仕様のラックを用意することで対応、晴れてAltix 450のデスクサイド型の特別モデルが誕生した。納入されたAltix 450はItanium9100番台を1システム当たり16コアを搭載する。

 同研究室はこれらのコンパイラ/アーキテクチャ協調技術を情報家電や自動車といった分野で普及させるための取り組みを続けていく意向で、近く、産学協同の形でOSCARマルチコアプロセッサおよびコンパイラを組み込んだシステムを提供していく計画であるとしている。

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