課題設定力と渇望感がビジネス成長を支える日本のインターネット企業 変革の旗手たち(2/3 ページ)

» 2008年01月08日 00時00分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

トラフィックが多様化しても魅力的なサイト作りが収益機会を増やす

ITmedia 最近では、検索エンジンやCGM(Consumer Generated Media)を経由したユーザートラフィックの増加という傾向が見られますが、この現象はWebビジネスにどのような影響を与えているとお考えですか?

杉原 企画、広告のみのポータルを提供するようなビジネスモデルはもう成立しなくなったということでしょう。テレビとは異なり、既得権益的にメインのチャンネルを持っているところが入り口、という時代ではありません。個人サイトでもそれなりのトラフィックを稼げるので、いろいろなことをオープンにした方が、かえってトラフィックが集まりやすいという現象が生まれています。例えばショッピングでは、ショップに訪れるユーザーの3割は検索エンジンやCGM経由に置き換わっています。われわれからすると完全に無視できない状態です。今後、集客面においてより競争が激化するのは間違いありません。

 ここで問題となるのが、検索エンジンやCGMだけに集客を任せてよいのかということです。こうした現象は、楽天自身あるいは出店店舗様にとって、必ずしも経済合理性があるわけではありません。彼らの入り口よりも、楽天の入り口の方をブックマークに登録したいと思える魅力的なサイト作りが必要となってきます。

画像 「サービスのすそ野はもっと広げたい」と杉原氏

 その一方で、トラフィックを作り出すことだけを収益源とするだけではなく、顧客が購入に至るまでの行動や、購入後のフォローをも含めた、収益機会を作り出す技術やサービスの投下にも目を向けています。今やインターネットは、かかわらないで過ごす日はないというくらい生活の中に入り込んでいます。それゆえ、楽天が提供するサービスも、もっとすそ野を広げなくてはいけないと考えています。

ITmedia ネットサービスを展開する企業としては、新規サービスの創出ということが必須となってくると思います。そのあたりの取り組みについてお聞かせください。

杉原 まずグループ全体で、「グロース・マネジメント・プログラム(GMP)」という取り組みを行っています。事業の中には大きく分けて、現時点で収益力のあるもの、成長段階にあるもの、これから発生するインキュベーション的なものが考えられます。そこで、新しいサービスや技術への投資について、グループ全体で包括的に投資バジェットを持てるように考えています。自サイトに再投資するだけでなく、全体から大きなバジェットを取り出しておいて、それらを新規事業に投資する動きを始めています。

 また、技術研究所を設置し、多くのテーマを設定して投資を行っています。基礎技術ほど先見性のあるものではありませんが、ECやインターネットのライフデザインにかかわりそうなテーマが主となっています。社内には現在、業務委託まで含めると1000人くらいの開発メンバーがいます。

ITmedia ビジネス構想を表す1つのキーワードに「楽天経済圏」がありますが、これが狙いとするものは?

杉原 楽天市場、楽天トラベル、楽天証券など、顧客に単体のサイトをより利用していただくのはもちろんですが、これら共通の会員システムを提供し、会員行動情報を蓄積したデータベースを構築しています。顧客がグループ内のサイトを横断的に使用すればするほど、その人にとって利便性が高まり、経済合理性の高いサービスが提供されるというサイクルを目指しています。これを楽天エコシステム(循環型経済圏)と呼んでいます。今後はこのエコシステム上に、多様な金融決済手段や物流サービスなども提供して、付加価値を高めていきます。

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