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» 2008年02月14日 07時00分 UPDATE

ERPで変える情報化弱体企業の未来:SaaSの潮流と普及のための条件(後編) (1/5)

SaaSというサービス提供モデルは、その利点が企業に理解されれば一気に普及期に入るのだろうか。今回は、SaaS普及のための課題および条件について探ってみる。

[赤城知子(IDC Japan),ITmedia]

このコンテンツは、オンラインムック「ERPで変える情報化弱体企業の未来」のコンテンツです。関連する記事はこちらで一覧できます。


 前編では、SaaSの定義と現在の市場の受け止め方および動向について解説をした。後編となる今回は、SaaSが市場で完全に普及していくための課題および条件について探ってみる。

SaaS普及のための課題と条件

 「国内SaaS/ASP市場の需要動向調査」を分析すると、利用阻害要因を解消すればSaaS/ASPの利用が促進される可能性が高いことが判明した。

 Webベースでアプリケーション機能の提供を行うソフトウェアオンデマンド(SoD)を普及させるためには、「セキュリティの保証」「カスタマイズ性の向上」「大手ベンダーによる長期コミット」「費用対効果の証明」「既存システムとの連携」といった点について、ベンダーは訴求する必要がある。

 下記に顧客企業のSaaS/ASP利用促進のための課題と条件をまとめる。

ユーザー企業のSaaS/ASP利用促進のための課題と条件(Source: IDC Japan, August 2007)
利用阻害要因 阻害要因緩和の条件 SaaS/ASPの選択条件
1位 データを外部に預けるのが心配…50% 堅牢なセキュリティを証明する契約…41% 堅牢なセキュリティ対応…66%
2位 セキュリティが不安…48% 通常システム開発と同様の柔軟なカスタマイズ対応…33% 費用対効果…45%
3位 カスタマイズの柔軟性に欠ける…38% NECや富士通、IBMといった大手ITベンダーのSaaS…27% カスタマイズの容易性…36%
4位 サービスのパフォーマンス…23% パッケージで構築するよりもトータルでIT投資額が下がる…27% 拡張性が高い…32%
5位 既存システムや新規パッケージとの連携性が不安…21% カスタマイズやアドオンしてもバージョンアップ可能…26% 自社業務への適用率…32%
6位 SaaS/ASPベンダーの長期コミットが不安…16% SaaS/ASPは5年使うとパッケージを買うより高くなりそうだ。…16% パッケージに勝るSaaS/ASPサービスがない…16% 既存システムや今後導入するパッケージとの連携パフォーマンス向上…23.7% 十分に安価であること…30%

 IDCが実施した需要動向調査によると、企業のSaaSに対する期待や懸念は「費用対効果」「セキュリティに対する不安」「カスタマイズ性」など、既存の情報システムに対し漠然と比較した内容に基づくものが多い。また、技術/ビジネスモデルの革新や、肥大化するWebなど市場環境の変化も、企業におけるSaaS価値の理解を妨げている。

 国内SaaS市場が拡大するためには、顧客企業が同サービスの価値を理解する必要がある。さらには、どのようにして収益性の高いビジネスを実現するかが、SaaSベンダーにとって大きな課題である。そのためにはサービス価値の明確化、柔軟な営業体制、SaaSを拡大する上でのセキュリティやカスタマイズ性、費用対効果といった阻害要因の解消に努めるべく、SaaSベンダーは技術的/論理的裏付けによって顧客企業に対し丁寧に説明する必要がある。

 また、新しい技術/ビジネスモデルに対する懸念は論理だけでは解消されないことも多い。SaaSベンダーはProof of Conceptや実績を広く開示し、信頼を得ることが重要となる。さらには、企業の期待するSaaSは、すでに構築されているシステム領域ではなく、新たに導入を検討するソフトウェア分野が多い。SaaSベンダーは、オンデマンド/パッケージソフトウェアといった視点ではなく、新しい領域におけるIT活用の有効性を市場に対し啓蒙する必要がある。その中で、SaaSの特徴/優位性を説明していくことが重要である。

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