コスト削減、という課題がなくても、真っ先にコストが削減される対象となるのがユーザー教育のようである。筆者は長年IT技術教育の現場にいるが、常日ごろからユーザー教育の必要性と熱意に関して、現場とIT運用管理者と経営者層との間で明確に温度差があることを感じてならない。早い話が、現場は明らかに教育が必要だし、現場のユーザーをもっときちんと教育することで簡単に解決できる問題は山のようにあるのだが、それが後手に回っているが故にもっと甚大な問題が発生したり、余計にコストがかかったりしているのである。そしてその事実を、IT運用管理者も経営者層も認めたがらないのである。
だからこそ、教育に関するプロセスをきちんと回してほしい、と思う。
DS7についても、3つの図を示す(図5)。DS7はビジネス要件に対して有効性に最も働き、二次的に効率性に働くとしている。筆者はさらに(こと日本においては)コンプライアンスにも密接に働くのではないかと見ている。事実、筆者の周りで「コンプライアンス」という言葉を多少なりとも正しく理解し、使っている人はほとんどいない。良くて法令順守、たいていはルール、モラル、マナーを守りましょう、というレベルの解釈のようだ。ITガバナンスは「価値の提供」が主要関連領域だとしている。ビジネスとはとりもなおさず価値を提供する活動であり、ITはそのビジネスに対して価値を提供するものである。つまり、利用者がIT(使い方にせよ、セキュリティやコンプライアンスといったリテラシーでにせよ)に対する正しい知識を持っていないと、ビジネスに対する価値を十分享受できないということを意味している。
次に、コントロール目標である。こちらもウォーターフォール式で示す。
利用者の教育と研修のコントロール目標は、
A: アプリケーションおよび技術的ソリューションの効果的かつ効率的な利用と、ユーザーによるポリシーおよび手続へのコンプライアンスを、ビジネス要件とし、
B: 重点をおくべきコントロールは、ITユーザーの研修ニーズを明確に把握し、効果的な研修戦略と結果測定を実施することである。
C: 実現するための手段は、次の4項目である。
D: その成果の測定指標は、次の3項目である。
教育や研修は、その効果測定が大変難しい。しかし、やり方はある。
分かりやすいところでは仕事の効率がどの程度上がったか、という指標がある。ただし、生産性という表現をしてしまうとミスジャッジを招くことがある。教育や研修を受けることによってより複雑なことができるようになり、その結果今まではできなかったような難しいことを、時間をかけてでもできるようになったかもしれないからだ。生産性だけを重視してしまうと、この時間をかけて、という部分だけに目がいってしまう可能性がある。また、コールセンターにかかってくる電話の件数、利用者の満足度、といったことでも判断できる。
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