「内部統制報告制度に関する11の誤解」の使える部分を探してみたITIL Managerの視点から(2/4 ページ)

» 2008年04月17日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

6.監査人等の指摘には必ず従うべきか

[誤解] 内部統制の整備・評価は、監査法人やコンサルティング会社の言うとおりに行わなくてはならない。

[実際] 自社のリスクを最も把握している経営者が、主体的に判断。

(具体例)

・監査人の適切な指摘

監査人の指摘は、内部統制の構築等に係る作業や決定が、あくまで企業・経営者によって行われるとの前提の下で、適切な範囲で行われる必要。

・監査人等の開発したマニュアル、システム

監査法人やコンサルティング会社の開発したマニュアル(内部統制ツールなど)システムを使用しなければならないということはない。


 そりゃ、そうだろう(苦笑)。最終的には経営者が判断するのは当然だ。この誤解は、「内部統制により、会社は監査人の天下になる」というような解釈から生じたのではないだろうか。

 経営者は忙しいので(あるいはよく分からないので)監査人に丸投げしてしまうという可能性がある。「△△についてはよく分からん。お前に任せた!」という無茶振りをする経営者も多い。「」の部分にはこれまで、財務(会計)/IT/法律といった言葉が入ってきた。これからは内部統制もこのに含まれそうな雰囲気がある。それではダメなのだ。経営者が自ら内部統制に対して関心を持ち、正しく勉強し、積極的に関与することが必要となる。

7.監査コストは倍増するのか

[誤解] 財務諸表監査に加え、新たに内部統制監査を受けるため、監査コストは倍増する。

[実際] 内部統制監査は、財務諸表監査と同一の監査人が一体となって効率的・効果的に実施。

(具体例)

・監査計画の一体的作成

財務諸表監査と内部統制監査の監査計画を一体的に作成。

・監査証拠の利用

それぞれの監査で得られた監査証拠は相互に利用。


 これでは誤解に対するフォローになっていない。COBITやITILといったプロセスを導入するだけでも、必ずコストはかかる。「ITILはコスト削減になる」という認識は誤りである。ITIL を導入することで、コストは削減されるのではなく、最適化されるのだ。無駄をなくすことは可能だが、投資が必要なところに投資していなかった、という状況も明らかになる。つまり、コストが削減できるとは限らないのだ。

 また「内部統制監査は、財務諸表監査と同一の監査人が」実施したとしても、監査人は「ギャラは今までと同額でいいです」とは言わないだろう。しかも、監査の結果不備が見つかった場合は、さらにコストがかさんでしまう。

 とはいえ内部統制に不備が見つかるということは、「やらなければならなかったことを、やってこなかった」ということである。この機会に、「余計にコストがかかる」と考えるのではなく、「コストを最適化し、無駄をなくし、必要な部分に投資する」という観点で臨みたいものだ。

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