寅さんがいない場所で「タコ社長」は何をしているかIT Oasis(1/2 ページ)

中堅中小企業のIT投資プロジェクトに関わる事柄を考えてみたい。まず、会社の中で一番偉い人、社長さんについてである。

» 2008年05月12日 08時45分 公開
[齋藤順一,ITmedia]

 映画「男はつらいよ」に出てくるタコ社長をご存じだろうか。寅さんの妹、さくらの夫の諏訪博さんが勤めているタコ社長の会社は印刷会社で典型的な中小企業だ。

 「忙しい忙しい」と言いながら隣の草団子店に入り浸って、幼なじみの寅さんにちょっかいを出しては怒られるあの社長である。映画を見る限りでは社長なんて気楽な稼業にも見える。実際はどうだろうか。

 私がお会いした中小企業の社長のエピソードをいくつか紹介しよう。

外国語は「食」から学ぶ

 私が支援した中小企業の社長が、得意先が中国に進出するのに合わせる形で中国に工場を作ることになった。

 中国進出するにあたって、社長は中国語が話せるようにならなければ、工場の立ち上げはおぼつかないと考えた。社長が自ら率先して工場の立ち上げをするのが中小企業である。中国人を指導するのに日本語ではらちが明かない。現地社員とのコミュニケーションには中国語が必須である。

 そこで社長は近所の中華料理店に中国人が働いているのに目をつけた。会社にいるときはせっせと店に通い、八宝菜や天津飯などを食べながらその従業員と会話をかわし、半年後には日常会話に支障がないレベルまで上達した。中華料理店仕込みの中国語を駆使して、中国進出も無事に終わり、今では売り上げは国内分を上回っている。

足りないものに気付くと即行動

 別の会社の社長。彼の会社の工場は先代の建てたもので、かなり老朽化していた。そこで社長は工場のリニューアルを思い立った。新しい機械の導入や、設備のレイアウト合理化で、得意先の値下げ要求や納期短縮要求に応えるためである。

 しかし、工場を建て直すとなると土地を借り、仮建屋を作り、機械一式を移設し、更地にした後建屋を建て、機械を元に戻すといった作業を、生産を継続しつつ、こなしていかなければならない。難事業である。社長はそうした事業を進めるにあたり、自分には経営学や経営戦略の知識が不足していることに気が付いた。社長は経済学の講座を受けるために、休みを利用してオープンカレッジに通い始めた。20数年振りの学生生活であるが、意気揚揚と学んでいる。

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