Googleのクラウドユートピアは企業ニーズに合致せず――MuleSourceのCEOが指摘(2/2 ページ)

» 2008年05月12日 17時46分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK
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普及の妨げは独自技術

 エンタープライズユーザーがクラウドになかなか移行しない理由の1つとして、Salesforce.comのPaaS(Platform as a Service)であるAPEXや、SaaS(Software as a Service)プロバイダー各社が、それぞれの独自技術に顧客を縛ろうとしていることが挙げられる。

 「Salesforce.comのAPEXは閉鎖的であり、NetSuiteなどのプロバイダー各社もそれぞれのサイロ(独自技術)にユーザーを閉じ込めようとする。データをやり取りするメカニズムがない状態でサイロを次々と追加するというのは、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の本来の目的に反するものだ」とローゼンバーグ氏は指摘する。

 プロプライエタリな技術だけが唯一の障害ではない。GoogleのApp EngineはオープンソースのPython言語を利用しているが、ローゼンバーグ氏によると、App Engine上で作成するプログラムはPythonでしか記述することができないという。Googleでは、今後、言語のサポートを拡大する予定だとしている。

 こういった制約が、ベンダーおよび顧客を真のクラウドベースのコンピューティングから遠ざけているようだ。クラウドコンピューティングは本来、Webソフトウェアが各種の言語やプラットフォームとの相互運用性を可能にするものである。ローゼンバーグ氏によると、必要なのはクラウド用のオープンな共通プログラミング言語である。これはSalesforce.comのAPEXのようなものだが、インフラとしての要件はJava仮想マシンがクラウド内で動作することだという。

 ローゼンバーグ氏は、IBMやSun、Hewlett-Packardにも責任があるとしている。これらのベンダーは大規模なデータセンターを構築し、企業のクラウドインフラの将来の基礎を提供しなければならないという。

 これらのビッグスリーベンダーがクラウドインフラを立ち上げることができれば、データ連携ビジネスに注力しようとしているMuleSourceなどの小規模ベンダーにもチャンスが生まれる可能性がある。

 あまねく存在するクラウドというGoogleの理想世界に業界が魅了されている今日、ローゼンバーグ氏の批判は冷静な見方に基づくものだと言える。ジルアード氏も次のように書いている。

 「現在は真の長期的な変化の兆しがようやく見え始めた段階にすぎず、経済の将来について考えている人は次の点を考慮すべきである――情報へのアクセスは民主化を促す力であり、クラウドはコラボレーションと情報の共有を安価かつ容易にする」

 これは、Googleが強くフォーカスしているコラボレーションの取り組みについては当てはまるようだ。この取り組みでは、ユーザーはGoogleのPostiniアプリケーションの保護の下でワープロ、表計算、プレゼンテーションのアプリケーションを利用することができる。

 しかし体系的なコンピューティングの基盤となる大規模なエンタープライズインフラのバックボーンに関しては、宣伝文句と現実の間にはまだ明らかにギャップが存在する。

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