大地震が発生! その時、管理者(あなた)は……?良い管理者 悪い管理者 普通の管理者(3/6 ページ)

» 2008年06月30日 08時00分 公開
[木村尚義,ITmedia]

被災は他人事、特に対策せずに過ごしていると――

 〔悪いシステム管理者・神田正男〕は、マシンルームにいた。机の下に隠れようとしたが、資料が入ったダンボールに机の下が占領されていたため、両手を頭にしてしゃがみこんだ。上から分厚い取扱説明書が落ちてきて、神田の頭に当たった。書籍やらコンピュータ部品が容赦なく神田に降りかかる。ようやく揺れがおさまったが、真っ暗で何も見えない。どうやら停電のようである。

 神田は、マシンのわずかながらのインジケータランプを頼りに、安全そうなところまで這い出た。マシンルームには懐中電灯が用意されていないので、ポケットに入っていた100円ライターを取り出した。可燃物が散乱しているところで火をつけるのは危ないと思ったが、非常事態なのでしかたない。注意深くやれば大丈夫だろう。

 耐震構造の建物だから、被害は考えなくてよいはずだ。そのために、賃貸料が高いのだから……。そう思う神田の頭には、耐震構造と免震構造の区別はなかった。

 そんな神田でも、万一のことを考えて、毎日バックアップを取っている。バックアップテープは、耐震構造の同じ建物内に保存されているから安心だろう。

 神田もバックアップは、いつかテストでリストアしてみようとは思っている。だが、本番のマシンに戻すと、使用中のファイルが壊れてしまうかもしれない。うまくいっているのに、何もトラブルを起こすこともない。

 そこで、マシンをリプレースするタイミングでリストアするつもりだった。だが、いざリプレースするとなると、いろいろな作業が発生するため、とてもテストどころではなかった。

 震災は、少なくとも自分のせいではない。突然の停電に備え、無停電電源装置があるのだし……。無停電電源装置だけでも2〜3日は大丈夫だろう。

(ちょっと待て。無停電電源装置はせいぜい数十分しか持たないぞ!)。

 そう思った神田がマシンラックを見ると、1Uのサーバがラックから飛び出ている。サーバがしっかりとねじ止めされておらず、ラックの扉が開いている。飛び出したサーバに落ちてきたマニュアルが妙な具合に乗っかっている。さらに、ラックのアームも捻じ曲がっている。せっかくの無停電電源装置は、マシンが飛び出してしまったため電源ケーブルが外れてしまっていた。パニック映画で見かけるような、コンピュータから火花が散っていることはなかったが、ハードウェアはかなりの損傷を受けているようだ。

 偶然が重なって、運悪くマシンが駄目になった。それでも、代替のマシンにバックアップを戻せば、何とかなるだろう。バックアップがちゃんと取れているかどうか分からないけど。

 そんな神田が焦げ臭さを感じたとき、100円ライターの火が何かに燃え移っていた――。

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