Jヴィレッジで少年サッカー大会を陰で支えるMS Officeスポーツ記録を可視化(1/2 ページ)

日本サッカー協会が主催する全日本少年サッカー大会では、マイクロソフトのOffice製品を基に開発されたスコアリングシステムを導入している。少年期の個人の記録を残すことで、将来を担うサッカー選手の育成に力を入れている。

» 2008年08月06日 12時09分 公開
[杉浦知子,ITmedia]
グリーンカードを掲げる審判員

 サッカーの試合で審判が出すカード。レッド、イエローの他にもう1枚、緑色のカードがあることをご存知だろうか? グリーンカードと呼ばれるそれは、怪我をした選手へ手を差し伸べたり、ボールがタッチラインを割ったときに自ら申告したりと、フェアプレーの精神に則ったプレイをした選手に提示されるカードで、日本サッカー協会(JFA)がU-12以下の大会で積極的に導入を薦めている。

熱戦を繰り広げる小学生たち

 そんなグリーンカードを通して少年期からフェアプレーの精神を推進している全日本少年サッカー大会は、U-12世代ではJFA公認の唯一の全国大会。過去32回の歴史の中、森本貴幸選手など日本代表選手を数多く輩出して来た同大会は、第29回大会からマイクロソフトのOffice製品で図面作成ソフトの「Visio」をベースにアプリケーション開発会社マイスターが開発したスコアリング専用ソフト「Visco For Soccer」を導入し、チームの成績だけでなく個人の得点やグリーンカードの枚数などを記録・蓄積することで、ITによる未来の日本代表育成を支援している。

 Visco For Soccerを利用し蓄積されたデータは、大会の公式記録として残るだけでなく、同時にインターネット上でも公開され、大会に出場する選手やその家族はもちろん、Jリーグ関係者や中学・高校のサッカー部の監督なども閲覧が可能。大会期間の1週間では実に240万を越えるアクセスがあるという。

 現在世界で活躍しているサッカー選手の小学生時代からのデータを入手する場合、現状では関係者に直接話を聞いたり、わずかに残っているスコアブックを根気良く調べる以外にないことを考えると、このシステムは画期的である。JFAでは既に現在U-15の試合で活躍する選手の個人データを公式データとして記録している。

Viscoを使ったスコアリング

高田修一氏

 マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部Office製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャの高田修一氏は、Visioを基盤に構築されたスコアリングソフトウェアの特性についてこう話す。「Visioはただ図面を作成するだけでなく、図面の中の図形一つ一つにデータを持たせることができます。その図面の上にプログラムを作ることで、単に図面を描くだけでなく情報を目に見えるように作成できます。データと図形の連携というVisioの特徴を生かしてスコアリングができるソフトウェアです」

国士舘大学の学生ボランティア

 大会においてスコアリングを担当するスタッフはすべて、国士舘大学の学生とマイクロソフトおよびマイスターの社員によるボランティア。1試合につき5人のボランティアが配置され、2人が状況を声に出して実況すると同時に手書きでスコアを作成し、それを基に1人がPCでViscoに入力。残る2人のうち1人が2カ所に設置された大会本部とピッチをつなぐ中継所にデータを運び、もう1人が予備のPCで次の試合の選手登録などの準備をする。マイクロソフトのボランティア社員もピッチで実況の声出しやスコアリングのサポートを行う。

スコアなどの入力画面。中ほどにグリーンカードの枚数を入力する欄もある(左) 出場選手の登録はフィールドに選手を配置した図に置き換えて視覚的に分かりやすい(右) 

 ピッチで入力されたデータと手書きのデータを照合することによって時刻や選手名の間違いをなくし、さらに中継所でマイクロソフト、マイスター両社の社員とJFAのスタッフによる2度の承認を経なければならないため、より精度の高いデータの集積が可能である。公式データは、スコアのテキストデータとスコア表の画像データの両方を専用のSQL Serverに登録する。SQLサーバのレポーティング機能を使ってテキストデータはインターネット上のスコア集計画面に集計され、画像データはそのまま画像で表示される。星取表とトーナメント表のみ、SQL Serverで集計されたデータを元にマイスターの社員が手作業で入力している。

スコア表(左)とシュートに至った経緯は3段階まで図で記録する(右)

 データは試合終了後1時間前後でインターネットのサイト上で公開され、誰でも閲覧が可能となる。携帯電話からも閲覧が可能だ。

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