J-SOX対応中に7割の企業で不備が発生――アビーム調べスキル不足も目立つ

アビームコンサルティングは、上場企業を対象に日本版SOX法への取り組みについて聞いた調査の結果を発表した。

» 2008年09月03日 14時58分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 アビームコンサルティングは9月2日、上場企業を対象に日本版SOX(J-SOX)法への取り組みについて聞いた調査の結果を発表した。7割の企業で不備が発生するなど、J-SOXへの対応が簡単ではないことが分かった。

J-SOX Initiative統括責任者を務める中野洋輔氏

 内訳を見ると、業務プロセス統制では72%もの企業が何らかの形で「不備がある」と回答した。決算および財務プロセス統制では57%、全社的統制では50%が不備があるとしている。不備について、同社でJ-SOX Initiative統括責任者を務める中野洋輔氏は「承認してはいけない人が承認している業務処理がある」などの例を挙げる。業務の細かい手続きなどを定義し、管理することの難しさを示している。

 J-SOXに対応する体制の整備、構築面でもう1つ明らかになったのは「7割の企業が内部統制の全社的な取り組みを1つか2つしか実施していないこと」だった。うち約半数の企業で一致していた取り組みは、内部統制対応責任者の任命だった。

 一方で、7割以上の企業が3〜5月の調査時点で、文書の更新作業や統制のための改善活動を終えていないなど遅れが目立った。中野氏は「J-SOX対応の実現で大事なのは取り組みの浸透」と話しており、社内的な告知活動が足りないことが遅れの原因になっている可能性が浮かび上がった。

評価面にも課題

 今回の調査対象は上場企業の300社。連結売上高が1000億円以上で国内のみで事業を営む「G1」、同条件で複数事業または海外事業を持つ「G2」、事業規模が1000億円より少ない「G3」に分類した。

 J-SOXに関する評価面でも課題が存在する。アビームが問題視するのは、評価の中心になる内部監査部門において、評価担当者1人が担当する「キーコントロール」と呼ぶ統制上の要点の数が100にも及ぶことだ。特に、G2では170にも上っており、1人当たりの負担は大きい。

 また、およそ4割の企業が「評価の実施手順が定まっていない」と回答した。中でも、半数以上の企業が評価人員のリソース不足やスキル不足を挙げている。中野氏は担当者に求められる要素として、内部統制への理解と業務への精通を挙げる。一方で、アビームのように専門知識を持つコンサルティング会社などにアウトソースする選択肢がある点も強調した。多くの企業が評価段階に進んでいるものの、実施手順の策定や評価体制の構築に課題を持っていることが分かった。

 全体の対応状況をグループ別に見ると、G1が最も進んでいた。J-SOX対応を社内で評価する人数が想定的に多いという。G2は海外拠点で対応を評価するリソースが足りない傾向がある。複数拠点を持つ場合も多く、評価対象となる事柄が多い。G3は、3つのグループの中で最も体制の整備が遅れていることが分かった。例えば、内部統制運用テストに際しての会計監査人とのコミュニケーションの実施状況が、G1の64%、G2の75%に対し、G3は37%と著しく低いなど改善の余地がある。

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