コラム
» 2008年09月11日 12時19分 UPDATE

IT Oasis:ERP導入費軽減をためらう理由――あるプロジェクトチームの事情 (1/2)

「ERP導入費用2億円」――。IT投資において、この額が妥当かどうかは、ケースによって異なる。筆者が相談を受けたある会社の場合は、どう考えてももっと安くできるはずだった。しかし私の提案はその会社のプロジェクトチームに拒絶された。その理由をマネジャーに聞いてみると…。

[齋藤順一,ITmedia]

ERP2億円、本当に妥当なのか

 獅子身中の虫ということわざがある。獅子の体内に寄生して、獅子を死に至らせる虫の意である。転じて、味方でありながら内部からわざわいをもたらすこと。会社の中の社員は組織の一員であって「虫」という表現は不穏当かもしれないが、獅子と虫とではその向かうべき方向や立ち位置が違うということがあるというお話。

 ある中堅企業の社長から依頼が来た。

 この会社はある業界向けに製品を作っている。同じようなものを作っている会社は世界に3社しかないそうだ。ニッチな市場であるが高い技術力と製品開発力が要求される製品で、旧帝大の卒業生もたくさん就職している。

 その業界では依頼元の会社の技術や製品は必須とも言えるもので、間接的ではあるが、ほとんどの人はその会社の技術によって豊かな生活を送っているはずである。

 そういったポジションなので業界の中では一目置かれており、安値競争とも無縁で、経営基盤も安定しており利益率も高い。

 社長の依頼というのは次のようなものだった。

 「競争相手の2社がERPを導入したので、当社も競争上検討したいと部下が言ってきた。プロジェクトチーム(以下PT)を作って検討させたところ、2億円かかるという結論が出て決裁を求めてきた。私は必要なIT投資を迷ったりはしない。当社の利益につながるものなら何億かかっても導入はやぶさかではない。しかし、自社の製品のことならボルト1本、ナット1個まで値段、品質、供給元などを評価できるが、あいにくITは門外漢である。2億円が妥当かどうか私には評価できないので支援して欲しい」

 経営者は全知全能ではない。自身が経営する会社の組織や製品、業界などの知識、判断力が求められるのは当然だが、IT投資のような散発的にしか発生しない事象について自ら判断ぜず、外部専門家に評価支援を依頼するのは適切な措置と言えよう。

プロジェクトの中身と会社の実態

 早速、会社に出向いて、社長とPTメンバーの方に個別に面談した。PTは総務、経理、製造といった課業の部長で構成されており、実質的にはその下の課長クラスの人たちが事務局を作り活動していた。PTは1年かけてERPベンダー10数社をヒアリングし、2社に絞り込むところまで来た。費用は概算2億円で、これとは別に要件定義を2000万円で発注し、要件定義後、全体費用を確定するという。

 突っ込みどころ満載のプロジェクト進行であったが、そもそもなぜERPが必要なのかを聞いてみた。すると、同社はEU、米国、アジアなどに営業所を持っており、それらを連携運用させるためにはERPが最適という結論に達したのだそうだ。

 しかし、よく聞いてみると営業所といっても社員が数名の規模であり、バッチ運用でも特に問題はないと判断できたし、国内工場の生産ラインも生産管理パッケージを導入すれば5000万円もあれば必要な機能は満足されそうだった。ERPはベンダーの提案に乗っただけというのが正解のようである。

 そこで私はPTマネージャーに、「ERP導入の必然性はないでしょう。今動いているオフコンの生産管理システムをオープン系に移行すれば機能もスピードも向上するし、使い勝手もよくなります。海外拠点との連携はバッチ処理で十分です。2億円も金を使うのはもったいないですよ。5000万円もあれば十分いいシステムが作れます」と返事をした。

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