無線LANのパフォーマンスは「干渉」に大きく影響される。今回は距離や無線LAN以外の電波――例えば電子レンジ――が無線LANのパフォーマンスにどういった影響を与えるかを検証する。
前回までで、空いているチャンネルがない場合、チャンネルをずらす、出力を変えるといった設定でパフォーマンスを確保するのは難しいことが分かった。しかし、少し大きなビルである程度のエリアをカバーしようとすると、アクセスポイントは複数台必要となる。建物の中ですべてのアクセスポイントに対し同一のチャンネルを使用しないよう設定することは現実問題として不可能である。しかしながら、距離が離れたり、壁や床、障害物などの影響によって信号は減衰する。そのため、アクセスポイントを十分離すことによって同一のチャンネルを干渉することなしに使用することができる。そこで、次に無線LAN環境間の距離による干渉の差について測定を行った。
この実験でも使用する環境はいままでと同様である(リスト1)。チャンネルはWLAN1、WLAN2ともに1chに固定とし、アクセスポイントの出力は100%とした。実験では、Azimuthの減衰器(アッテネータ)をソフトウェア的に制御し、それぞれの無線LAN環境間で伝搬される信号の減衰量(パスロス)を変化させてそれぞれが送信できるフレーム数を測定した。
1.IEEE802.11b同士
2.IEEE802.11g同士
3.IEEE802.11g(WLAN1)と11b(WLAN2)
実験の結果は図1〜3のようになった。まず、パスロスが115dBの場合、11b同士、11g同士、11bと11gのいずれのケースでも干渉の影響はほとんどなくなり、理論上の最大値に近い速度で通信できている。前回行った実験では、パスロスが105dB以上になるとアクセスポイントとクライアントの間でリンクが維持できなくなっていたが、それよりもさらに10dB離す必要があるという結果である。
アクセスポイントと無線LANのネットワークインタフェースカードの間のパスロスと、アクセスポイント間のパスロスを同列に論じることに異を唱えられることもあると思うが、いずれにせよ相当離さないと干渉の影響はなくならないことが確認された。
11b同士、11g同士ではおおむねパスロスを大きくするほどパフォーマンスは向上しているが、パスロスが95dB前後の場合のみ、その前後に比べてパフォーマンスは悪くなっている。これは、距離が中途半端に離れることでCSMA/CAのメカニズムが機能しにくくなるためと考えられる。従って、チャンネルに空きがない場合、一番弱く見える無線LANと同一のチャンネルを選択するというのは必ずしも正しい選択とはいえない。
また、11bと11gの混在環境では、パスロスと通信速度の間に明確な関係は見られず、それぞれの通信速度が大きくばらつく結果となった。実験はあくまでAzimuth中の理想的な環境で行っているため現実の世界でどうなるかは分からないが、11bと11gが混在する環境では注意が必要かもしれない。
ここまで無線LAN同士の干渉について議論してきたが、今度は無線LAN以外の電波との干渉について考えてみよう。実は、11bや11gが使用している2.4GHz帯の電波を使用する機器は意外に多い。「無線LANと電子レンジは同じ周波数帯を使っている」という話はよく知られているが、電子レンジのほかBluetoothやコードレスフォン、さらにコードレスの監視カメラなども2.4GHzの電波を発する。よって、これらの機器は当然11bや11g規格を使用する無線LAN(11b/g)と干渉を起こす可能性がある*。なぜなら、無線LANのノードは無線LANのフレームの存在を確認しなくとも、ある一定レベル以上の受信電力レベルが認められれば伝送媒体が使用中であると判断し、フレームの送信を見合わせるからだ。ここでもCSMA/CAのメカニズムは有効である。また、送信されたフレームがこれらの電波により破壊されることもある。
これらはともに無線LANに対する干渉であり、当然パフォーマンスに影響するはずである。そこで、最後に無線LAN以外の電波による干渉の影響を測定してみよう。
ただし、IEEE802.11aの場合5GHz帯を使用するので、これらの電波と干渉することはない。
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