Software AGは「Innovation World 2008」でSOAを用いたBPM改革を強調する一方、Morgan StanleyやCoca Colaなど事例セッションも多く開催した。米国企業がITで仕事のやり方を改善する作業に熱心であることを印象付けている。
「みんなどこへ行ったんだ? 多分投票所の列に並んでいるんだろう」
USA Todayが朝刊で大統領選当日の雰囲気を伝えた11月4日、米フロリダ州マイアミで、ドイツのSoftware AGが年次カンファレンス「Innovation World 2008」の基調講演を開催した。SOA(サービス指向アーキテクチャ)を用いたBPM(ビジネスプロセス管理)改革を強調する一方、Morgan StanleyやCoca Colaなど事例セッションも多く開催され、米国企業がITで仕事のやり方を改善する作業に熱心であることを印象付けた。
Software AGのカールハインツ・ストレイビッチCEOは「金融危機による景気後退が結果として企業にSOAやBPMの採用を迫ることになる」と話す。世界的な危機に見舞われている経済状況に触れながらも自信を見せた。SOAで構築した企業システムは柔軟に変更できる特徴があり、例えば買収による他社とのシステム統合などもしやすくなるという。
BPMは、具体的に「バグ対応のリクエストは常にジョーに送る」や「昨年100万ドル以上売り上げに貢献してくれた顧客から苦情が来た場合、顧客サービス担当副社長に直接知らせる」といった、ビジネスにおけるさまざまなワークフローの集合といえる。
法の順守やコンプライアンス対応においては、ワークフローをITで体系的に定義し、最適なビジネスプロセスを確立している企業が強いという。
事例セッションが多いのが同イベントの特徴だ。
米証券会社大手のMorgan Stanleyは、ビジネスプロセスの改善が自社のアプリケーションの「近代化」を促した経験を披露した。同社では、「グリーンスクリーン」と呼ぶメインフレームのアプリケーションで遂行していた会計業務の効率化に取り組んでいた。
Morgan Stanleyのエグゼクティブディレクター、ジム・ケルン氏によると、ユーザーインタフェースの複雑さや退屈なデータ入力作業など改善すべき事柄が出てきた。そこで、Software AGのソフトウェアを活用してビジネスプロセス改革を実施したところ、ROI(投資収益率)は初年度31%、7年後には110%にまで達したという。
自動車のマーケットプレイス最大手のAutoTrader.comで最高製品責任者を務めるダン・クロー氏は、基調講演でwebMethodsを活用した自社のビジネスプロセス改革を紹介した。「ビジネスゴールは4つ。顧客サービスの改善、オペレーションの合理化、ITとビジネスの融合、他者への差別化要素の拡大だ」とクロー氏は話す。
「BPMとマスターデータマネジメント(MDM)、SOAの3つを融合させるビジネスインフラ戦略を実践するにあたり、webMethodsが鍵を握っている」(クロー氏)
また「自動車のオンライン広告が収益源だが、新聞など既存メディアとも競合する。次のレベルにいかないといけない」と自社の状況を説明した。米国における自動車向け広告市場は右肩下がりで振るわない。だが、消費者によるインターネット購買額全体は年々増えているという。ネット専業のAutoTrader.comにとって、こうした消費をいかに自動車に向けるかがビジネス拡大の鍵だという。
米Coca Colaも、SOAとBPMソフトウェアを利用したシステムでビジネスの生産性を改善したとして自社の取り組みを紹介した。Coca Cola Enterpriseのケビン・フラワーズ氏によると、BPMソフトウェアを使うことによって「ビジネス側は以前よりも変化に責任を持てるようになり、業務における価値を創出する際にITと連携できるようになった」という。一方、IT側はSOAでシステムを構築することにより、システムを柔軟に変更できるようになった。同時に、システム構築プロジェクトのコストを削減できたという。
ITとビジネスを融合させるBPMに本格的に取り組む米国企業は非常に多い。日本企業も見習うべき点も多いといえそうだ。
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