さよなら、タッチおじさん――IT業界マスコットのあれこれ今日から使えるITトリビア

お菓子のパッケージから各種イベント、スポーツチーム、官公庁にいたるまで、世の中にはたくさんの「マスコット」がいる。もちろんIT業界でも、多くの製品にマスコットが設定された。こんなキャラクターがいたのは覚えていますか?

» 2008年11月08日 15時49分 公開
[吉森ゆき,ITmedia]

なつかしのマスコットたち

 マスコットはもともと「開運のお守り」という意味の英語である。そこから派生して「幸運をもたらす人や動物」を指す言葉として使われるようになった。もちろん世界共通語として広まっており、特に4年に1回開催されるオリンピックのマスコットは、発表のたびに話題になる(そしてすぐに忘れられる。北京オリンピックの「福娃」って覚えている?)。スポーツのプロチームでも応援キャラクターとしてマスコットが設定されている。また、多くの企業が自社の商品をアピールするための広告媒体としてマスコットを用意した。

 日本では、商業広告が発展し始めた1950年代からマスコットが多く生み出される。有名な不二家の「ペコちゃん」は1950年生まれだから、もう58歳だ。薬局の店頭にあった佐藤製薬の「サトちゃん」は1959年に登場したとされる。また、現在のパナソニック系列となる家電販売店「ナショナルのお店」の店頭には、「ナショナル坊や」がいた。1970年代ごろまでは、こうしたポップドールをよく見かけたものだった。

 そんなマスコットだが、企業向けのビジネスが中心だったIT業界ではあまり用いられてこなかった。否、作られたことはあるのだろうが、メジャーになるものはなかった。IT業界のマスコットが有名になり始めたのは、1990年代になってPCが普及し始めてからである。


タッチおじさん さよなら、タッチおじさん……

 PCのマスコットときいてすぐに思い出すのは、富士通の「タッチおじさん」だ。富士通のPC「FMV」がシェアを伸ばすとともに、タッチおじさんも有名になっていった。大阪出身の48歳、機械音痴という設定で、キャラクターの声は坂田利夫が担当していた。一時期は、スリーサイズが「B98 W98 H98」という「タッチおばさん」なる奥さんも登場している(Windows98に合わせた設定?)。タッチおじさんは、2000年ごろまで富士通のPCを一生けんめい宣伝していたが、富士通がCMキャラクターとして木村拓哉を採用した時期に、静かに姿を消していった。「タッチおじさんわーるど」というホームページも2001年8月に閉鎖されてしまった――。

ばざござ PCの販促ではご無沙汰だが、まだまだ現役。ちなみにバザール・デ・ゴザールの誕生日は11月10日だ

 富士通のタッチおじさんとほぼ同時期、PCのシェアでライバル関係にあったNECでは「バザールでござーる」という販促キャンペーンのCMを流していた。そのマスコットだったのが、「バザール・デ・ゴザール」という名前のサルだ。アフリカ出身でバナナが大好物という設定で、父母兄弟だけでなく、祖父母や甥までいるという大家族だ。最近はCMに登場する機会はほとんどないが、現在も現役のマスコットであり、バザールでござーるのホームページも頻繁に更新されている。

 ソフトウェアのマスコットとして有名なのは、ソニーのメールソフト「PostPet」に登場したピンクのテディベア「モモ」だろう。このソフトは、モモのほか、ウサギの「ミッピ」、カメの「スミコ」といった「ペット」がメールを配達するというユニークなものだが、製品のマスコットとして扱われているのはモモだけだ。

オープンソース系はマスコットの宝庫

 IT業界のマスコットは、メーカーが設定した商業広告で活躍するものだけではない。たくさんのマスコットがいるのが、オープンソース系のソフトウェアだ。

Tux Tux。Linuxに知見がない人でも、見かけたことがあるのでは

 その中でも最も有名なのが、Linuxのペンギンだろう。名前を「タックス(Tux)」という。これは、Linuxを生んだリーナス・トーバルズが提案し、ラリー・エウィングがデザインしたもの。このマスコットがメジャーになったことで、オープンソースソフトウェアのコミュニティでは、マスコットを作ることも欠かせない開発作業となっていった。また、オープンソース系のほかのOSにも影響を与え、Mac OS Xのオープンソース版であるDarwin OSには、「ヘクスレイ(Hexley)」という三つ又の槍を持つカモノハシのマスコットが作られた。また、Free BSDには、「BSDデーモン(BSD Daemon)」というマスコットがいる。かわいらしい悪魔の格好をしたマスコットだが、BSDデーモンのスペル「Daemon」は、悪魔のスペル「Demon」とはスペル違い。このデーモンは、バックグラウンドでタスクを処理するプロセスを意味するとともに、「守護神」という意味でも使われている。

Duke Duke。このマスコット自体も、オープンソース化されている

 サン・マイクロシステムズが発明したJavaにも「デューク(Duke)」というマスコットがいる。とんがり頭で赤い丸鼻が特徴のかわいらしいキャラクターだ。このキャラクターは、サンがJavaを発表した当初から使われているが、残念ながらコーヒーカップから湯気が出ているJavaのロゴマークに比べると知名度は落ちるようだ。

 マスコットといえば、かわいらしいものが定番だが、むしろコワいくらいなのが、ネットスケープ コミュニケーションズが作ったマスコット恐竜「モジラ(Mozilla)」だ。当初はNCSAのブラウザ「Mosaic」キラーを意味するものだったという。

 そのMozillaから派生したブラウザ「Firefox」では、一転して親しみやすいキツネのマスコット「フォクすけ」が作られた。名前からも想像できるように、このマスコットは日本向けのプロモーション活動の一環として2006年に生まれたもの。

 マスコットは、製品のユーザー、あるいは開発者にとって、非常に愛着のあるものだ。今後もユニークなマスコットがどんどん登場してくることだろう。

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