日立とSAP、グローバル協業強化新市場開拓も視野に

日立製作所とSAP AGは、「SAP グローバル サービスパートナー」のパートナー契約を12月2日に締結。マーケティング、販売、システム構築にいたる広範囲な協業をグローバルで推進することに合意した。

» 2008年12月02日 16時08分 公開
[大西高弘,ITmedia]

日本発のソリューション戦略も

新たなパートナーシップを構築する日立とSAP。左から、日立製作所 奥出聡氏、同中島純三氏、SAP AG マンフレッド・ハイル氏、SAP ジャパン ギャレット・イルグ氏

 「SAP グローバル サービスパートナー」とはSAPサービスパートナーの最上位レベルに位置するもので、現在、世界でも20社のみが認定されているだけだという。認定に必要な達成項目は、「高い顧客満足度」「協同での顧客成功事例」「高い技術力とSAPコンピテンシーセンタの取り組み」「業種に特化したソリューションを提供できる能力」などで、SAPユーザーの評価によってパートナーを表彰する「SAP AWARD OF EXCELLENCE 2008」において「パートナー総合部門」を含む4部門で初の同時受賞を果たした日立は、最上位レベルのパートナーとして選ばれたことになる。日立は1994年にSAPとパートナーシップを結んでおり、その関係は15年におよぶ。

 日立の中島純三執行役常務は「2008年春から、グローバル サービスパートナー認定についての話し合いを始めていた。今回の締結をきっかけとして、海外でビジネス展開をしている日本企業や、欧米の顧客企業のグローバル展開をより強力にサポートしていきたい」と語った。

 具体的な施策としては、「日立SAPグローバルセンタ」を日本に設置する。欧米でSAP事業を展開する日立コンサルティングや同じくSAPビジネスを展開するグループ企業が集まる「日立SAPビジネスコンソーシアム」と連携し、情報を集約していくという。日立SAPグローバルセンタは現在兼任者を含む10人で運営スタートさせるが、今後はさらに増員する予定だという。

 同社産業・流通システム事業部の奥出聡副事業部長は「経営コンサルからSAPシステムの設計、構築、運用支援まで一貫してサポートするには、情報を集約し効率的に仕事を進めるグローバルな体制が必要。世界の新しい市場を獲得するためには、当社のSAPビジネスの実績をより強くアピールする必要がある。中国と北米で同様のSAPシステムを同時に構築していたら、互いに情報を共有しあい、作業効率を高めることもできる。テンプレートを積極活用し、SEがかかわる比率を案件ごとに低めていく努力も必要だ」と語り、同センタの重要性を強調した。

日立 日立のSAPグローバルビジネス戦略の概要

 ソリューションに関する情報活用について、SAP AGのSenier Vice President、マンフレッド・ハイル氏は「SAPの各コミュニティー群には技術者系、ビジネス系などあらゆる種類が存在する。ハードウェアも開発している日立の技術力、サービス力がこうしたコミュニティーと強力なタッグを組むことは大変すばらしいことだ。今回締結した新しい関係は、ハードウェアとサービスに強いリーダーシップが必要となるグリーンITやクラウドコンピューティングの分野でも大きな力となるだろう。その意味でも、今後長期的な展望に立って、パートナー関係を構築していきたい」と語った。

 日立は、共同研究施設「SAP COIL(CO-Innovation Lab)」を活用し、日立のプラットフォームミドルウェアなどの最先端技術とSAPソリューション連携の共同検証や新規ソリューションの開発を行う。また、ワールドワイドにSAP要員を育成し、SAP最新認定資格取得者を国内、海外合わせて2011年までに2080人(2008年現在で1600人)にする予定だ。また日立は2011年のビジネス規模の目標として、2008年の380億円から600億円へ伸ばす計画だという。この額はシステム構築、ハードウェア、ミドルウェア、ソフトライセンスなどの収益を含む。

 会見の最後に、SAP ジャパンのギャレット・イルグ代表取締役社長兼CEOは、今回の協業について「長い時間をかけて多くの準備を必要だった。そして今後も不断の努力を重ねていくことになる。しかし多大な成果が期待できる取り組みだ。日本のSAPユーザーへの満足度を向上させるきっかけにもなり、さらには日本発の戦略ソリューションをグローバル展開していく足がかりともなるだろう」と話し、新たなビジネスチャンスへの期待をにじませた。

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