業務情報は風前の灯!――出張帰路の安らぎを奪う謎の白い液体悲しき女子ヘルプデスク物語(2/4 ページ)

» 2009年07月07日 08時00分 公開
[ITmedia]

おじさま観察に余念のないわたし

 新幹線が動き出した。白い液体の調査を一時中断し、さっき購入したお弁当を広げるわたし。わたしにとって出張の楽しみといえば、行き帰りでのお弁当や出張先でのお食事、みんなとの楽しい飲み会などだ。いわゆる「花より団子」派である。早速お弁当のふたを開け、お茶のペットボトルをテーブルのドリンクホルダーへセットして、まずはおかずへと箸をのばす。

 おかずを口の中で”もんぎゅ、もんぎゅ”と味わうわたし。余談ながら、こういう時のわたしの食べ方は、「もぐもぐ」ではなく「もんぎゅ、もんぎゅ」である。普段、忙しく昼食を取るときは、よく噛んで食べることが少ない。だからこそ、時間に余裕のある時は、じっくり噛み締めて食べたいのだ。しかし、どうしてもおじさまが気になる。イヤでも視線はおじさまの席に向かってしまう。通路を挟んだ前の席とはいえ、そんなに距離があるわけじゃない。おじさまの使っているノートPCの画面にはMicrosoft Wordが表示されている……。

 あれ? わたし普段使っているWord 2003とは、どこか雰囲気が違う。どうやらWord 2000 のようだ。

 さらにおじさまが使っているノートPCを良く見ると、懐かしきSONYのVAIO PGCシリーズではないか! わたし自身、同じシリーズを持っていたことがある。本体に熱がこもらないように、PCのふた(画面側)を開けると、底面の後方がせり上がるタイプである。でもあのモデルは、Windows 98がベースだったような気がする。あのおじさま、かなり“もの持ち”が良さそうだ。そんな年代もののノートPCだから、当然、デカい。A4、いやもっと大きいぞ。おかずやご飯をひと口、口に運んでは”もんぎゅ、もんぎゅ”と食べつつ、(失礼にも)おじさま観察に夢中なわたし。

 片やおじさまは、Word に右手人差し指1本で、たどたどしく文字を入力していた。いわゆる“1本指打法”である。左手には白い液体の入ったコップを持ったまま。文章の中身を考えながら、ぽつり、ぽつりと入力している。3〜4行ほど入力した頃だろうか。わたしはふと、不思議なことに気付いた。

 新幹線の1列目には、通常より大きめのテーブルがある。このテーブルを広げればあの巨大なノートPCも飲み物の入ったコップも置けるのに、おじさまは備え付けのテーブルを使っていない。まさにノートPCのあるべき(?)姿、ひざの上に置き、ラップトップ状態で利用していた。そして右手で入力作業、左手には謎の飲み物。(あまり見ては失礼だな)とか、(画面に何が書いてあるのか読めてしまいそうだし、見てはいけないな)とか思ったわたしは、お弁当を食べ終わると自分のノートPCを広げ、メールチェックや出張報告書の作成に取り掛かった。

 しかし、お腹いっぱいになってしまったわたしは、しばらくすると睡魔に襲われていた。報告書だけは忘れないうちに書いてしまおうと頑張ったのだが、気を抜くとすぐに睡魔と沿い寝してしまいそうだ。気力を振り絞りやっとのことで報告書を書き終わり、これで到着まで寝られるなあとPCをたたみしまい始めた時のことだった。先ほどのおじさまの画面が目に留まった――。

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