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» 2009年07月23日 08時00分 UPDATE

システム構築の新標準:プライベートクラウドの誕生と変遷 (1/2)

クラウドの台頭に伴い、システム構築の新たな手法として「プライベートクラウド」の可能性が浮上してきた。企業とクラウドのかかわり方はどう変化しているのかを解説する。

[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

 2009年も引き続き、クラウドコンピューティング(以下クラウドと略記)が注目を集めている。しかし、自社の情報システム基盤としてクラウドを活用することに対する企業の見方は慎重だ。こうした中、ユーザー企業とクラウドの新たな関係を表す「プライベートクラウド」という言葉も登場してきた。そこで、本稿ではプライベートクラウドをテーマに取り上げ、「ユーザー企業とクラウドのかかわり方がどう変化しているのか」を解説する。

プライベートクラウドが生まれたいきさつ

 今回は、「プライベートクラウドは一体何か」というテーマを取り上げる。まずはクラウドについて振り返ってみることにしよう。その特徴やメリットは以下のようにまとめることができる。

(1)利用者側は、情報システムを構成する各要素を、インターネット経由でサービスとして利用する

(2)情報システムを構成する要素を仮想化/抽象化し、システムを迅速かつ柔軟に構築、運用できるようにする

(3)クラウドを提供する側が膨大なITリソース(資産)を保有することにより、利用者側がスケールメリットを享受する


 (1)はネットワーク経由でソフトウェアや開発基盤、サーバやストレージなどのインフラの機能を利用する概念を指すXaaSの定義にほかならない。つまり、「XaaS」+「仮想化/抽象化による柔軟性と迅速性」+「膨大なITリソースによるスケールメリット」がクラウドの要素になる。

 クラウドを利用する企業の理想は、自らITリソースを持たずに、低コストで柔軟かつ迅速に情報システムを構築、運用することである。だが、ユーザー企業が実際にクラウドを活用しようとすると、以下のような課題が浮かび上がってくる。

  • 自社の運用ポリシーやサービスレベル保証との整合性が取れない場合がある
  • 課金体系と利用ユーザー数の兼ね合いによっては、逆にコストが高くなる場合がある
  • 自社の管理下にある既存システムとの混在による運用の複雑化と、それに伴うデータ連携やトランザクション処理などの課題

 これらはクラウドが持つメリットの裏返しといえる。情報システムを所有せずに利用することは、多くの場合、運用ポリシーやサービスレベルの保証を他者に委ねることを意味する。不特定多数での利用を想定したクラウドでは、ユーザー数に基づく課金体系を採用しているケースが多い。ユーザー企業がそれを全社員にそのまま適用すると、コストが割高になってしまう場合もある。また、すべての情報システムをクラウド上に配置できるわけではないため、自社内に設置する場合とクラウド上に配置する場合の使い分けにも注意が必要になってくる。

 ところがこれをよく考えてみると、ユーザー企業は情報システムの所有をあきらめなくても、上記のクラウドによるメリットを享受できる。仮想化を活用したシステム基盤を構築すれば、必要とするITリソースを自社で所有する形態であったとしても、(2)の実現は可能だ。

 そして、構築したシステム基盤を自社内やグループ企業内に提供すれば、それはクラウドのミニチュア版と呼べるサービスになる。つまり、(1)や(3)のメリットを自社内やグループ企業内に限定して享受できる。

 こうして生まれたのがプライベートクラウドという概念にほかならない。つまり、プライベートクラウドは、以下のように定義できる。

プライベートクラウドの定義

自社の管理下にある情報システムに対して、クラウドを構成する種々の技術を適用することにより、運用ポリシーやサービスレベルの保証といったガバナンスを維持したまま、クラウドのメリットを享受しようとするシステム構築、運用の考え方。またはそのようにして構築、運用されるシステム


 クラウドをプライベートクラウドと区別するために、最近では冒頭に挙げた従来のクラウドを「パブリッククラウド」と呼ぶようになった。また、プライベートクラウドは「エンタープライズクラウド」と呼ばれることもある。ただし、エンタープライズクラウドは、パブリック/プライベート両方のクラウドを取捨選択して、企業の情報システムの構築、運用に役立てるという意味合いも含むため、注意が必要だ。

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