わが社のコスト削減

中古のルータやスイッチを使う選択肢わが社のコスト削減

ネットワーク機器は信頼性が優先されるだけに、維持や保守のコストも必要になる。最近、中古の機器を再利用してコストを抑制するという新たな選択肢が登場した。

» 2009年08月07日 07時15分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 通信インフラを支えるルータやスイッチなどのネットワーク機器には、厳しい品質が求められる。それだけに機器の維持や保守に伴うコストについて、あまり削減の余地がないと考えるIT管理者も多い。ネットワーク機器でもコストを抑制する一つの手段として、中古のルータやスイッチを活用する動きが登場した。

まだ動く機器たち

北野氏

 システムサービス会社のライセンステクノロジーは、2008年から中古のルータやスイッチ製品の販売と買い取りを行う事業をスタートした。同社の北野雄太代表は、「基幹システムのネットワーク機器は高信頼であることが第一だが、信頼性をそこまで求めない部分には安価な中古製品を利用するという手もある」と話す。

 北野氏は以前、大手ITベンダー数社で購買物流や製品物流などの業務を経験。「サポートが終了した古い機器を引き取る仕事を通じて、役割を終えてもまだ十分に動く機器の行く末に疑問を感じた」と話す。ユーザー企業で償却期間を迎えた機器や、ベンダーでの取り扱いが終了した旧型製品は廃棄処分される場合も多く、動作に問題がなくても再利用されるケースは少ないという。

 「ネットワーク機器自体が壊れるケースは少なく、ユーザーが支払うサポートコストは安心料みたいなものと言える。基幹部分には不可欠だが、信頼性があまり要求されない部分にも同じレベルのサポートが必要だろうか。まだ使える機器なのに簡単に廃棄されるのは、環境保護の観点からも好ましくないだろう」(同氏)

海外では流通網が整備

 中古PCでは査定から買い取り、販売までの流通体制がすでに確立されているが、中古ネットワーク機器はまだこうした体制が整っていない。システムサービス会社がユーザーから譲り受けたり、廃棄物業者が引き取ったりしたものを各社が小規模に販売しているのが実情で、市場規模も明らかではない。

 しかし、米国を中心に海外では中古ネットワーク機器の流通網が確立されており、複数業者によるオークションや、国境を超えて機器を調達するのが一般的だという。同社の場合も米国やシンガポールなど5カ国の業者と提携し、中古機器をすぐに調達できる体制を構築している。

 中古機器を求めるのは、少人数の企業から大手のシステムインテグレーター、教育・研究機関とさまざま。厳しい予算繰りの中で質の良い機器を求めるケースや、テスト環境用に安価な機器を求めるケース、代替用に部品だけほしいケースなど、顧客ニーズの内容は幅広いという。

 販売価格は新製品の1〜8割程度で、例えば新製品時に110万円するものが中古では30万円ほど。10/100Mbpsのレイヤ3スイッチでは7万円程度となっている。北野氏は、「国内で調達するのが難しい場合でも、海外の業者に声を掛ければすぐに部品も含めて譲ってくれる。注文から遅くても2週間ほどで顧客に提供できる」と話す。

 調達した機器は、北野氏を含めた同社のスタッフと協力会社が動作チェックを徹底して行い、1年間の保証を付けて販売する。同氏によれば、中古機器は正常に動作していたものが古くなっただけであり、古いといっても発売から数年しか経過しておらず、不安要素は少ない


 ネットワーク機器は、新製品が登場する度にスループットが向上し、メガデータセンターで使うような機器では100Gbpsに到達する。1Gbpsクラスに対応したコンシューマー製品も多く、今後も性能志向の市場ニーズは大きくは変わらないとみられる。

 北野氏はこうした傾向が必ずしも実際の利用シーンに適するとは限らないと話す。「基幹システムは高性能、高信頼が不可欠で、新製品と充実したサポートで堅牢な体制を整えるべき。しかし、一般的な中小企業の総務部門や経理部門の仕事で数Gbpsもの帯域が必要になるだろうか。全社一律に新製品と手厚いサポートを導入するよりも、適材適所でコストを掛けていくべきだと思う」(同氏)

 同社での事業規模は1億円に満たないほど。しかし、中古ネットワーク機器の流通は今後、企業内に行き渡ったITシステムのコストを最適化する1つの手段として注目される。

 北野氏は、「まずは離島など、まだまだIT環境が充実していない場所に機器を提供し、IT普及の一助になれればと思う。ネットワーク機器はITの世界を広げるという夢を与えてくれた。今度は中古機器でもこの夢をかなえたい」と話している。

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