チャールズ・フィリップス社長が基調講演を務めた。ファーストファッションを例に挙げ、アプリケーションと財務情報のすばやい連携によってビジネスモデル自体を変えられることを紹介した。
米サンフランシスコでOracleが開催している年次ユーザーカンファレンス「Oracle OpenWorld 2009 San Francisco」の2日目、チャールズ・フィリップス社長が基調講演を務め、AIA(Application Integrated Acrchitecture)およびSOA(サービス指向アーキテクチャ)を用いたアプリケーション間連携が順調に進んでいることをアピールした。
フィリップス氏は、OracleがFusion Middlewareなどによって企業情報システムの足腰になるインフラ部分を安定させたことで、アプリケーション統合が容易になり、結果としてビジネスの効率を上げるための具体的な機能を作り込めるようになっていることを強調する。
特に業務を常に財務の視点から眺めるようにすることが重要という。皮切りに紹介したのが、2008年に買収したプロジェクト管理アプリケーション「Primavera」と、ERP製品であるE-Business SuiteおよびJDEdwardsとの統合だ。
「支払いができるのか、納品ができるのか」――。企業活動をする上で、ビジネスユーザーはこうした判断を日々下さなければならないが、これまでのERPの仕組みはプロジェクトにおける財務余力などと直接連携していないことが多く、実際には正確な判断ができないことがあった。
同じように、フィリップス氏は2007年に買収したビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーのHyperionのアプリケーションとPeopleSoftの統合にも触れた。BIとPeopleSoftが持つ人事情報をつなげることで、個人が使える予算をより細かく正確に判断できるようになる。
Hyperionが持つ業績情報とPeopleSoftの人事情報を連携させておくことで、例えばその月の売上高が改善したことによるビジネスユーザーの予算アップなども正確に把握できるようになる。予算が増えた場合も減った場合も、管理職は常に部下の購入申請に対する可否をすばやく、かつ正確に判断できる。
企業のビジネスを財務の視点からリアルタイムに見られるようにすることで、従来は難しかったビジネスモデルの構築も可能になる。
日本にも上陸して話題をさらった衣料品小売りのH&Mは、20%という比較的低い利益率、年10回の商品入れ替えを実施することで、利益を200%の水準に引き上げた。このような「ファーストファッション」と呼ぶビジネスを運営するためには、需要予測から生産計画、物流、店舗従業員の動きに至るまでのビジネスの流れについて、財務の側面から把握しながらスピーディーな運営を心掛けなくてはならない。ユニクロを展開するファーストリテイリングは、OracleのアプリケーションであるRetekのユーザーとしても知られている。
フィリップス氏は講演で、ファーストファッションのようなビジネスにも対応できるアプリケーションを紹介した。
アプリケーションは、どの服がどこにあるのか、どの服をどの店で販売するべきかといった判断をするための情報をそろえている。デモでは、米国本土において各商品別に、北東部に流すべきもの、カリフォルニアに流すべきものといった判断をアプリケーションの画面上で簡単に把握できる様子が伝えられた。
ITがビジネスモデル自体を変化させる可能性を示すものとなった。財務との連携が鍵を握るといえそうだ。
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