さよなら、難しいコーチングビジネスマンの不死身力(1/3 ページ)

業務を円滑に進めるためにコーチングの要素を取り入れたアプローチは有効だ。だがスキルの習得や実践が難しい、と挫折してしまうマネジャーも少なくない。そこで今回は仲間とともに成果を挙げるコーチングのコツを紹介しよう。

» 2009年12月22日 17時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]

少し考え方を変えることで、仕事を楽しく充実したものに。「ビジネスマンの不死身力」では、そのノウハウをお伝えします。


 先日、ある経営者とお会いした際に、わたしの名刺に書かれた「コーチング」という言葉に興味を持ってもらった。その経営者は10年ほど前にコーチングを知り研修を受けたものの、その難しさに断念してしまったそうだ。

 コーチングには傾聴、質問、モチベーションアップなどのスキルやツールがある。だがこの方のように難しさを感じている方も多い。コーチングの要素の多くは横文字で表現されており、それが余計にわずらわしさを感じさせるのかもしれない。

 難しいスキルやツールにとらわれずに、簡単なポイントを繰り返し実践する。これがコーチングを実務で生かすための方法だ。そこで今回は、業務でコーチングを行うためのポイントをお話しよう。

聞く――相手が言いたいことを繰り返す

 「相手の中に答えがある」

 コーチングの実践においてよく耳にするキャッチフレーズである。質問は相手の中にある答えを引き出すために有効とされているが、意外と質問をすること自体が難しい。どんな質問がいいかと考え出すと、意識が自分に向いてしまい、相手の話どころではなくなってしまう。

 コーチングを練習する場合、まずは質問ではなく、話を聞くことからはじめるのをお勧めする。なぜならコーチングの時間のほとんどは、相手の話を聞く時間だからだ。

 話を聞くポイントは、相手の言葉を繰り返すことにある。

 例えば、部下がスケジュールの遅れについて相談に来たとしよう。「実は、最近スケジュールが遅れ気味で悩んでいます」と相談を受けたら、「なるほど、スケジュールが遅れ気味で悩んでいるのだね」と相手の発言を繰り返してみる。これは相手に対して「言いたいことは伝わっている」という意思表示や共感を示すことになる。相手も「悩みをきちんと分かってくれた」と認識できる。

 相手の言いたいことを要約して繰り返すのもいい方法だ。

 「最近スケジュールが遅れ気味で悩んでいます。顧客がなかなか仕様を決めてくれないのです。本当は顧客に強く言いたいのですが、あまり強く言えなくて困っています」といった長めの相談を受けると、相手の言いたいこと分かりにくくなり、お互いの意思疎通が難しくなる。

 そこで相手の話を短く要約して、「顧客が仕様を決めてくれないことで困っているのだね」と切り返してみよう。相手は言いたいことの焦点が定まってくるし、相手自身が困っていたことがらを再確認するようになる。相手に要約を伝えるときには、「つまり」「一言で言うと」などに続く文章を考えてみるといい。

 相手の話が長く、要約した内容と相手の言いたいことがずれてしまっても問題ない。話のずれを相手が訂正してくれたり、違和感が表情に表れたりする場合が多いからだ。こうしたサインを察知して「何か違和感があるようだね」と相手に伝えると、焦点を元通りに戻すことができる。

 相手の話を繰り返すことを意識していると、相手が何を言いたいのかを考える習慣が自然に身に付き、言葉になっていない部分も含めた相手の言いたいことが見えてくる。是非このコミュニケーションを繰り返し試してみてほしい。ヒアリング能力が格段に上がり、周囲との信頼関係を作りやすくなるはずだ。結果的に、相手の立場に立ってコミュニケーションができるようになる。

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