コラム
» 2010年01月10日 00時00分 UPDATE

日曜日の歴史探検:資金決済法の施行で目覚めるネット上の才能

2010年の施行が予定されている「資金決済法」。銀行などの金融機関以外の事業会社に対し、少額の為替取引を認めるこの法律により、個人を対象とする小口リテール決済は大きな変化がありそうです。

[前島梓,ITmedia]

 個人を対象とする小口リテール決済の分野で、大きな変化が起ころうとしています。

 決済方法の歴史を簡単に振り返ると、かつては、商品やサービスの引き渡しと同時に現金を受領する決済方法が主流でした。近所の駄菓子屋さんでお菓子を購入するようなケースを考えるとよいかと思いますが、商品などの売買が行われると、当事者間に債権・債務の関係が発生しますが、これを現金による資金決済で解消していました。

 非常にシンプルな決済方法ですが、この方法の欠点を挙げるなら、買い手は現金を持ち運ばなければならず、売り手は釣り銭を用意するとともに、正確な現金の受け渡し処理が要求されるといったことなどが挙げられます。

 現金による決済が抱える問題を解消しようと登場したのが、電子マネーです。事前に払い込まれた金額をデータとしてICカードなどに蓄積し、このデータを移転させることで決済を行うというものです。先の駄菓子屋の例でいえば、買い手は現金を持ち歩く必要がなく、売り手もまた釣り銭を用意しなくてすみ、かつ、正確な決済が可能となります。Edyなどがその代表例ですが、非接触型ICチップを搭載した「ICカード型電子マネー」は10年ほど前から普及しはじめ、いまでは数多くの商店などでICカード型電子マネーが利用可能になっているのは皆さんご存じのとおりです。

 ICカード型電子マネーは、前払式証票規制法によって規制されてきました。例えば、発行企業は未使用残高の2分の1を発行保証金として供託所に供託することなどが義務づけられていました。言い換えれば、そうした規制を甘受することで、電子マネーは貨幣としての信頼を得たのです。

 しかし、同じような電子マネーでありながら、これらの法規制を受けなかった電子マネーもあります。それが、電子マネー運営会社のサーバで管理する「サーバ管理型電子マネー」で、WebMoneyなどがよく知られています。サーバ管理型電子マネーは、ICカード型電子マネーのような金銭的価値が記録されているわけではないため、これまで前払式証票規制法の対象からは外れていましたが、ネットショッピングなどが一般的になるにつれ、こうしたサーバ管理型電子マネーも若年層を中心に支持を集めています。

資金決済法の施行で個人の才能が開花する?

tnfig1.jpg 個人間送金だけで生活する才能も登場するか?

 そんな中、静かな注目を集めているのが、2009年6月17日の第171回通常国会で成立した「資金決済に関する法律」、通称「資金決済法」です。

 2010年中の施行が予定されている資金決済法のポイントは、銀行などの金融機関以外の事業会社(登録を受けた資金移動業者)に対し、預金の受け入れや融資などの運用を行わない少額の為替取引を認めている点です。

 では、為替取引とは何でしょうか? 最高裁の判例では、「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、またはこれを引き受けて遂行すること」と定義されています。分かりにくいですが、ここでは資金の移動という点に着目しましょう。

 これまで、資金の移動を行う為替取引は銀行(預金取扱金融機関)にしか認められていませんでした。しかし、上述したように、実体経済では銀行以外の事業会社が実質的に資金を移動するサービスが登場し、また、発展してきました。

 為替取引は本来、安全性、信頼性が求められるべきものであるため、資金決済法では、そうした事業会社に法的な網をかけるものの、その見返りとして為替取引を認めるようにしたのです。なお、資金決済法の登場により、前払式証票規制法は廃止されますが、サーバ管理型電子マネーがICカード型電子マネーと同様に規制の対象となりました。一見すると、実体経済に法整備がようやく追いついたような印象もありますが、ICカード型やサーバ管理型の電子マネーにかかる制度整備を図った点などが資金決済法のもう1つのポイントといえるでしょう。

 では、資金決済法により何が変わるのでしょう。幾つか考えられますが、筆者が注目しているのは、個人が利用する少額の決済について、より安価で、便利な為替取引が登場するであろう点です。注目株としては、PayPalを挙げたいと思います。

 PayPalはクレジットカード決済による送金サービスを2007年から日本で開始していますが、資金決済法が施行されれば、銀行口座とひも付けた入出金、あるいはサーバ管理型電子マネーなどを絡めた送金がより簡単に行えるサービスを提供してくるでしょう(参考:PayPal、日本事業を本格化へ 国内の規制緩和受け)。より端的に言えば、例えばクレジットカードを持たないような未成年の方であっても、任意の個人に送金するようなことがより身近になると考えられます。

 従来は、ほとんどの事例で電子マネーを発行する事業会社に電子マネーの払い戻しは認められていませんでした。これは、電子マネーの発行から払い戻しが為替取引に該当するためであり、為替取引が認められていたのが銀行だけだったからです。このため、電子マネーと現実の貨幣に埋めがたいギャップが存在していましたが、資金決済法の施行により、電子マネーを発行する事業会社が電子マネーを実際のお金として払い戻すこともできるようになります。極めてまれな才能を持った個人を、こうした決済手法で支援するといったケースがより多く観測されるようになるかもしれないと筆者は期待しています。

 銀行などの金融機関が中心的役割を果たしてきた資金決済の分野ですが、簡便で低コストの決済方法を携えた資金移動業者が法的に整備された制度の上でどのような動きを見せるか。2010年の注目したいトピックです。

最先端技術や歴史に隠れたなぞをひもとくことで、知的好奇心を刺激する「日曜日の歴史探検」バックナンバーはこちらから


Photo contributed by worak


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