アナリストの栗原潔氏が国内主要ベンダーのクラウドコンピューティング戦略について取材する。今回はNECの東健二氏に聞いた。
アナリストの栗原潔氏が国内主要ベンダーのクラウドコンピューティング戦略について取材する。日立製作所、インターネットイニシアティブに続き、今回は、NECのサービスプラットフォームシステム開発本部長、東健二氏にNECのクラウドコンピューティング戦略を聞いた。
ITmedia NECのクラウド事業の全体像について教えてください。
東 NECがクラウド事業に乗り出した契機についてお話します。社内システムの変革の必要性を認識したことが発端になりました。グループ企業も含めてバラバラであった情報システムを、クラウドのような考え方で統合し、一元管理する戦略的プロジェクトが開始されました。そこで得たノウハウをお客様にも提供できると考え、企業向けクラウドサービスとして外販し始めたのです。
ITmedia 「クラウドサービスありき」ではないということですね。
東 その通りです。NECのITサービス関連事業では「クラウド」ではなく、「クラウド指向」という言葉を使うように徹底しています。クラウドそのものではなく、クラウドの考え方に基づいた企業向けソリューションの提供を戦略の中心に据えています。
ITmedia 社内の改革プロジェクトでは、基盤だけではなくてアプリケーションの統合も行われたのですね。
東 そうです。SAPのERPをグループ企業に全面展開することで、業務の効率化を図っています。基盤となるシステムはサーバもストレージも当然ながら自社製品を活用し、OSはWindows Server 2008を採用しています。Windows Server上でSAPのERPを大規模展開するという意味で、1つのショーケースになることを目指しています。
ITmedia 具体的にお客様に提供するメニューはどのようなものでしょうか。
東 サービス提供モデルとしては、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)型、共同センター型、個別対応型の3種類です。いずれもパブリックなサービスというよりは特定のお客様向けのプライベートなソリューションが中心です。NECのコア事業の1つであるシステムインテグレーション(SI)事業に加え、今後はサービス事業の拡大が急務です。
そこでクラウド関連技術を活用していこうという考え方になっています。例えば、仮想化技術を活用したリソースプールが重要な価値提案方法の1つと考えています。従来であれば数カ月を要していたような規模の拡張を1日で行えるなど、確実に利点が得られます。
ITmedia クラウドの特徴の1つである従量制課金についてどう考えていますか。
東 料金体系は個別案件ごとですが、一般的には国内の企業ユーザーにおいては重量制課金の優先度は低いと考えています。
ITmedia 他社と比較した差異化のポイントはどのあたりですか。
東 信頼性と実績です。現在、クラウド指向として行なっている活動は、NECが長年の間OMCS(Open Mission Critical System)で行なってきた活動と同じ方向性にあります。お客様の大規模システム、社内システムにおける実績という点でも評価をいただいています。
ITmedia 最近のクラウドビジネスで特に注目すべき動きはあるでしょうか。
東 1つにはシンクライアントへの注目の高まりがあると思います。情報漏えい対策、パンデミック対策などの後押しもありますが、お客様の需要が最近になり特に高まっています。最近の話としては、デジタルサイネージにも注目が集まっています。この分野はNECの得意領域でもありますのでクラウドとの融合で価値を発揮できるのではと考えています。
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