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» 2010年03月25日 11時30分 UPDATE

ドジっ娘リーダー奮闘記:任せる品格 (1/2)

仕事を「やらせる」のと「任せる」のには大きな違いがあります。「やらせる」は指示してその通りに作業させること、「任せる」は結果を求め工夫させることです。ではリーダーはどのようにメンバーに仕事を任せたら良いのか、しんこちゃんとともに学びましょう。

[小俣光之,ITmedia]

 新米リーダーしんこちゃんのチームに新しいメンバーが入り、メンバー全員で終業後に会議室を借りて歓迎会をすることになりました。その準備のために、しんこちゃんと面野くんと馬場くんが打ち合わせをしています。

イラスト:本橋ゆうこ イラスト:本橋ゆうこ

しんこちゃん 金曜日は上田さんの歓迎会、みんなで盛り上げましょう。面野君は食べ物の買い出しをお願いします。サンドイッチを5人前とピザ5枚、それとポテトチップスとチョコレートを5袋ずつ、角のスーパーで買ってきてくださいね。馬場君は部屋の準備担当よ。「上田さん、ようこそ」のボードを用意してね。部屋が殺風景だと寂しいから、飾り付けもほしいわね。色紙を3センチ幅に切って輪っかにしたものを交互につなげて50センチ、それを16本作ってアーチ型に垂らしましょう。それからそれから……。

馬場君 うへぇ、ずいぶん細かいなぁ。色紙の幅ぐらい指定されなくても大丈夫ですよ。

しんこちゃん 駄目駄目。馬場君はオッチョコチョイなところがあるから、適当な幅で作って、途中で紙が足りなくなるかもしれないじゃない。色紙の幅は3センチ、これが1番経済的で強度も高いのよ。あ、面野君も買い物に行くときはひと声かけてね。お菓子の美味しい銘柄を教えてあげるから。

面野君 予算を言ってくだされば、適当に見繕って来ますよ。僕たち子どもじゃないんですから、買い物ぐらい任せてください。

しんこちゃん うーん、心配だなぁ。面野くんに任せると、オマケ付きのお菓子ばかり買ってくるんじゃないかしら。

 細かく指示を出してメンバーを困らせているしんこちゃんの様子をチラチラ眺めている男が1人。先輩リーダーの輩田(やからだ)さんです。今日は説教はやめようと思っていたようですが、しんこちゃんがピザのトッピングを指定したあたりで、とうとう我慢できなくなってしまいました。

輩田さん へーっくしょい!

しんこちゃん あ、輩田さん。どうしたんですか、わざとらしくクシャミなんかして。さては、また立ち聞きしていましたね。

輩田さん “また”ではなーい、“たまたま”しんこちゃんたちの話が聞こえてきたんだ。ピザについては、わたしも希望がある。面野くんと馬場君はしばし休憩、しんこちゃんはわたしとピザのトッピングについて相談しようじゃないか。

 面野くんと馬場くんは休憩室に移動し、しんこちゃんは輩田さんと2人になりました。

輩田さん 新しいメンバーの歓迎会を開くのは良いことだ、感心感心。ところで、ずいぶん細かく指示を出していたけれど、しんこちゃんは仕事でもあんなに具体的に工程を指定するのかい? あれだったら、自分でやっちゃった方が早いだろう?

しんこちゃん はい。自分でやった方が早く進むのですが、それではメンバーが育たないし、私も仕事が増える一方です。そこで、できるだけ細かく指示を出してメンバーに仕事を振るようにしています。しかし自分でやるよりもメンバーにやらせる方がはるかに大変で、何とかならないかと思っているところでした。

輩田さん なるほど、少し考え方のアドバイスをしよう。仕事をメンバーに「やらせる」のと「任せる」のとの違いは何だろう?

しんこちゃん どちらも同じようなものではないですか? しいて言えば、やらせるは強制、任せるは信頼して頼むという感じですね。

輩田さん そうだね。やらせるは命令で、やり方も指示して作業させるという意味合いだ。任せるは結果を期待して、過程はある程度自由にしてもらう、というとイメージしやすいかな。ではやらせると任せる、メンバーが育つのはどちらだろう?

しんこちゃん メンバーの立場で考えれば、やらせられると受け身になって、任せられると頑張れるような気がします。

輩田さん そのとおり。やらされた仕事は、単に言われたとおりに仕上げるようになりやすく、任された仕事はやりがいを感じるものだ。それに任せられるたら、やり方を工夫しなければならないから自発性を求められる。メンバーが育つのは任せる方なんだ。さっきしんこちゃんは、「自分でやるよりメンバーにやらせる方が」と話していたけれど、もしかしてメンバーに仕事を任せていないんじゃないのかな?

しんこちゃん そう言われれば、そうかもしれません。でも、メンバーに任せた結果が上手く行かなかったらわたしが何とかしないとなりません。だから、こと細かに指示をしないと心配なんです。

輩田さん はーっはっは! そんな肝っ玉の小さいことを言っているようではリーダーは務まらんぞ。その考えだと、しんこちゃんチームはいつまでたってもしんこちゃんの器の大きさ以上にならんよ。組織というのは、同じ目標に向かってみんなが自発的に行動するからこそ価値があるものだ。ほら、しんこちゃんが新米のころ、私がどうやっていたかを思い出してごらん。

しんこちゃん 輩田さんは目的と期限だけ決めたら、「こんな感じで、後は頼むよぉー」でしたね、いつも。わたしは本当に苦労しました。

輩田さん 苦労したおかげで今のしんこちゃんがあるんだよ。あのときわたしが細かい指図を毎回していたら、しんこちゃんは指示待ち人間になっていたかもしれないだろう? それに、やり方をしんこちゃんが自ら考えてくれたから、わたしはほかの仕事に頭を使うことができたんだ。

しんこちゃん なんだ、そんな深い考えがあったのですね、わたしはてっきり輩田さんの性格かと思ってました。でもあのころ、任せたら失敗するのではないかと心配にならなかったのですか?

輩田さん もちろん心配だったよ。でもね、たとえしんこちゃんが失敗しても何とかできるという自信が、わたしにはあったんだ。お客さんとの関係が良好な仕事だったし、技術的にもある程度のめどを付けていたからね。任せたとはいえ、何かあったときの責任はリーダーが取るものだから、押さえるところはきちんと押さえていたんだよ。

しんこちゃん なるほど。それでいつも、難しいことをサラリと押し付け、もとい任せてくれたのですね。

輩田さん まあね。人に仕事を任せるときは、その時点でできることより、少し難しいレベルのことを与えるのがポイントだ。少しずつハードルを上げて、それを自力でクリアしてもらうことで人は成長するものだからね。メンバーの成長はチームの成長と同じことだから、とても重要だよ。リーダーだけが成長してもチーム全体が成長しなければ意味がないだろう?

しんこちゃん そうですね。これからは、チームの力も幅も広げられるように、どんどん仕事を任せていきます。

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