“標準化”って、ムズかしい。悲しき女子ヘルプデスク物語(1/3 ページ)

同じWordのファイルを扱うにしても、Tabの使い方を知ってる人とそうでない人では、使いこなしに大きな差がでる。でも使用機能を標準化しようとすると、基準についてのトレーニングも必要になるし……。ああ、悩ましい。

» 2010年04月21日 08時00分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]

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イラスト:本橋ゆうこ イラスト:本橋ゆうこ

 わたしの叔母が、地元自治会の役員(書記)になった。どうやら前任者が急に引っ越すことになってしまい、引き継ぐことになったらしい。とはいえ彼女は、購入したばかりのPCが早速役に立つと、喜んでいる……購入したばかりとはいっても、もう2年近くも前の話なんだけど。まあ、普段はネットサーフィンやトランプゲームぐらいにしか使っていないから、地域の役に立つのは良いことだ。

 ちゃんと目的を持ってPCを使えば、叔母の“PC音痴”も少しは治るかも、と淡い期待を抱いたわたしだけれど……。

 本当に淡かった。もとい、甘かった。

 「書記になったのよ!」という喜びの報告から1週間もたっていないある日の昼休み。突然、叔母が電話をかけてきた。わたしのケータイの向こうからは、「文字を入れると飛ぶのよ! 飛ぶの」という彼女の声が聞こえる。

わたし え? 飛ぶ?

叔母 そう。“ぴょん”って飛ぶの。

わたし 飛ぶって、何が……?

叔母 文字を入力しても出てこなかったり、変なところで改行されたりするのよ。

 (お願いだから質問に答えてちょーだい)というわたしの心の声を無視して、彼女は続ける。

叔母 明日の会議までに仕上げて印刷しないといけないの!

 はいはい。時計を見ると、昼休みもあとわずか。電話で話をしても、らちがあかないだろうと判断したわたしは、退社後に叔母の家に行く約束をして、電話を切った。


 終業時刻を迎え、急な仕事につかまる前に、早々にオフィスを逃げ……いや、退社したわたし。それでも仕事を終えた気分になれないのは、叔母の家でも仕事の続きが待っているからだろうか。当の叔母はPCを起動した状態で、わたしを待っていた。

叔母 前の人のWordは古いWordだったらしいの。わたしのWordは新しいWordだからおかしくなったのかねえ?

わたし 前の人?

叔母 “書類は毎年作り変えるわけじゃないから”ってことで、前の書記の人が、これまでのファイルを送ってくれたの。だから、そのファイルを開いて、変更していたのよ。それで途中まではうまくいっていたんだけどね。

 そう言いながら叔母は、マウスでWordファイルのある行をクリックし、文字を入力した。すると確かに、後ろの文字が「飛んだ」のだ。いや、その表現は正確ではない。文字を入力した位置よりも後方にある文字が、右方向に大きく移動したのだ。

叔母 ほら。こうやって文字を入れただけなのに、飛んじゃうの。何でかしらね。もらったファイルが壊れているのかしら。それとも、もともとの作り方が悪いのかしらね。今までのファイルではこんなことはなかったのよ。それでね……。

 という具合に叔母は、PCの前に座ってまくしたてる。手の動きよりも口の動きのほうが多い。しかも中身のある説明はほとんどない。こういう場合は、黙って聞いているに限る。

叔母 仕方ないから別のことをしようと思って、こっちに文字を入れてみたのよ。そしたら今度は、入力した文字が出てこないのよ! わけの分からない変なファイルよねえ。

 明日までに自治会の資料を作らなければならないのだから、彼女が焦っているのも分かるけれど、それにしてもよく回る舌だなあ、と感心するわたし。とはいえ、このまま放っておくわけにもいかないのよね。

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