クラウドに照準を定めたVMwareのロードマップ(1/2 ページ)

VMwareで仮想化とクラウドを担当するラグー・ラグラム氏が、最近のGemStone買収の狙いや市場戦略について語った。

» 2010年07月20日 11時54分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 現時点でデータセンター仮想化ソフトウェアの分野をほぼ征服した米VMwareの次なる目標は、単に重要なミドルウェアプロバイダーにとどまることなく、IT業界において新たな存在感を示すことだ。

 同社が目指すのは、トップクラスのクラウドコンピューティングプラットフォームプロバイダーとしての地位を確立するとともに、大企業、中堅企業、中小企業のすべての市場に対応できるベンダーへと脱皮することだ。

 Citrix XenServerおよびMicrosoft Hyper-Vとの厳しい競争に直面しながらも、VMwareのESXサーバおよびvSphere(管理プラットフォーム)はデータセンターに深く浸透した。しかしXenServerとHyper-Vがいずれ市場シェアを拡大するという予測に疑念をはさむ人はいない。Hyper-Vは約30%のシェアで安定した地位を確保するだろうという見方を示すアナリストもいる。

 しかし現時点で(そしてこれまで5年間にわたり)、VMwareは仮想化市場で揺るぎない地位を維持している。VMwareの製品はFortune 1000企業の90%近く、そしてこれに含まれないほかの多くの大企業で採用されている。同社は今、さらに広い範囲に網を投げ、多数の小規模企業顧客を獲得しようと考えているのだ。

 VMwareは7月13日、自社の主力製品の新バージョン「vSphere 4.1」をリリースした。vSphere 4の出荷が開始されてから約14カ月後のリリースとなるものだ。またVMwareは、バージョン4の登場まで3年間、同プラットフォームをアップデートしなかった。今回のリリースでは、中堅・中小企業への訴求を狙って価格も引き下げられた。

 vSphere 4.1では、最近のデータセンターソフトウェアに見られるのと同様の改善が盛り込まれている。すなわち、高速なパフォーマンス、高い拡張性、そして優れた管理機能だ。さまざまな形式のデータの増加が続く一方で、きめ細かなデータ管理に対するニーズの高まりが、こういった改善を促しているのだ。

 「1年前にvSphere 4.0を出荷したとき、vSphereはクラウドの基盤だとわれわれは説明した。そのころは、GoogleやAmazonがネット上で提供するサービスとクラウドが同一視されていた」――VMwareで仮想化とクラウドプラットフォームを担当するラグー・ラグラム上級副社長兼ジェネラルマネジャーは、米eWEEKの取材でこのように語った。

 「われわれは当時、vSphereをIT業界の標準アーキテクチャにするという構想を打ち出した。ITはメインフレームからクライアント/サーバへ、そしてWebへと進化した。その次に来たのがクラウドだ。われわれは今、インターネット規模での配備を始めるとともに、データセンター内のクラウド、すなわちプライベートクラウドの構築を開始した。このわずか12カ月の間に、われわれの構想が現実になってきたのだ」とラグラム氏は話す。

 ラグラム氏によると、多くの企業がクラウドのコンセプトを理解し始めている。先進的な企業では、クラウドサービスがどんなメリットをもたらすかという点に興味を抱いているだけでなく、自社用のプライベートクラウドを構築し、これらを外部のクラウドサービスに連係することにも関心を示しているという。

 「vSphereおよびこれに関連する当社の管理製品は、こういった先進企業に照準を定めている」と同氏は話す。

最初は仮想化、クラウドはその次

 ラグラム氏によると、中堅・中小企業市場では、多くの企業がまず仮想化レイヤーを追加することによって、データセンターとITシステムの刷新に取り組むという傾向が見られる。これらの企業はアプリケーションとストレージプールの再編を完了した後で、必要な分野でクラウドサービスの追加を検討するという。

 さらに意欲的な企業(一般的には資金力の豊富な企業を意味する)の場合は、プライベートクラウドの構築も検討し始めるという。プライベートクラウドで社内システムを結び付け、これをサプライチェーンやビジネスパートナーにリンクすることによって、効率改善と長期的な経費節減を目指すのだ。

 「中小企業の場合は事情が異なる。非常に複雑な作業であるため、大企業と同じようにITを刷新するのが難しいのだ」とラグラム氏は指摘する。「しかしそれは、彼らがIT刷新に向けた支援が得られないという意味ではない」

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