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» 2010年08月10日 08時00分 UPDATE

「クラウドは、もはやバズワードではない」――早稲田大学 丸山客員教授

早稲田大学の丸山客員教授は、過去数年のクラウドの状況を振り返りつつ、主要なクラウドプレイヤーの動向を分析し、ユーザーが選ぶべき道を示した。また楽天技術理事の吉岡氏は、自身の経験から“スケーラブルなシステム構築のベストプラクティス”を披露した。

[石森将文,ITmedia]
maruyama.jpg 早稲田大学の丸山不二夫客員教授。公立はこだて未来大学の特任教授、そして日本Javaユーザー会および日本Androidの会の会長も務める

 「クラウドは、もはやバズワードではなく、現実の存在として確固とした地位を築いた」――早稲田大学の丸山不二夫客員教授がそう喝破したのは、ITmediaエンタープライズ編集部が主催する「クラウドコンピューティングセミナー」でのことだ。

 丸山教授は、自身が実施してきた過去の「丸山先生レクチャーシリーズ」の内容を振り返りながら、聴衆に(市場における)クラウドの受容段階について述べた。丸山教授曰く、あらゆる国内外の主力ITベンダーが、クラウドによるソリューションを提案しており、またクラウドによる“コスト削減”という魅力が多くの企業の関心を引いているのが現状だ。今や、一般の消費者も、日常的にクラウド(により実現したサービス)の恩恵を享受している。

 従来は、クラウドサービスといっても、Amazon Web Services(AWS)やsalesforce.comによるもの以外の選択肢は少なく、またAmazonやsalesforce.com自身、日本国内にデータセンターを持たなかったため、企業がクラウドを受容するに当たっては「データの保存場所」が問題になっていた(業務データの国外保存をポリシー上認めない企業は多い)。だが「AWSとsalesforce.comは、2010年の秋、国内にデータセンターを設置すると表明している」(丸山教授)という。重ねて先日、Microsoftは富士通との間でアライアンスを結び、Windows Azureのサービスを提供すると発表した。日本企業がクラウドを受容する環境は、ここにきて急速に整いつつあるのだ。

 丸山教授は、クラウドへの現実的なアプローチとして、その利用者に対しては“現実に稼働しているシステムや既存のリソースに、クラウドのメリットをどう取り入れるかという視点”を、提供者側には“現実のビジネスで、クラウド利用のシナリオを具体化/精緻化した現実的アプローチ”を提案する。その結果、企業においては「オンプレミス型ITとクラウド型ITの連携、相互運用が焦点になる」(丸山教授)という。

 オンプレミスとクラウドの相互連携が進むと、企業のITシステムは仮想化からプライベートクラウドへ、そしてプライベートクラウドからハイブリッドクラウドへと遷移するだろう。丸山教授も「仮想化によるサーバ統合という視点だけでは不十分」と指摘する。企業の生産性を向上し、ビジネスの価値と競争力を高めるために、ITを利用するという視点が不可欠なのだという。「“Early Adopter”にこそ、大きな先行者利益がある」(丸山教授)

 講演後半ではAmazon、Google、Microsoft、salesforce.comといった主要なクラウドプレイヤーの戦略および、VMware、Appleの動向にも言及した。なお講演の全容は、9月7日から開催されるITmedia Virtual Expoで視聴できる。

楽天が示す“システム構築のベストプラクティス”

yoshioka.jpg 楽天 技術理事 吉岡弘隆氏

 インターネットを日常的に利用しておきながら“楽天市場”という名称を聞いたことがない、という人は少ないだろう。Webブランド指数で第1位(2009年、日経BPコンサルティング調べ)となった楽天だが、同社技術理事の吉岡弘隆氏は、クラウドコンピューティングセミナーの特別講演において「1997年の創業時、テナントは13店舗のみ。Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースを1台のサーバに詰め込んだ、素朴なシステムで運用していた」と紹介する。

 その後楽天は、わずか十数年の間に、会員数約4700万人、楽天市場での年間流通総額は1兆1000億円以上になるまで急成長した。当然、ユーザーの購買行動によるトラフィックも尋常な値ではなく、「ピーク時には1分間に1000回程度の購買行動が発生している」(吉岡氏)。

 これは、システムが1分間ダウンするだけで、“1000×商品単価”分の損害が発生することを意味する。そのため、同社IT基盤の運用・開発チームでは、転換率、ドロップ率、併売率などの流通貢献を含む流通総額を主なKPIとしつつ、コストは流通総額の1%以下に抑え、かつ99.95%の稼働率を維持することがミッションになっている。

 楽天では、2007年からの3カ年計画で、IT基盤の仮想化に取り組んできた。既に主要サービスの仮想化基盤への移行は完了しつつあり、吉岡氏は「コストの削減以上に、あるサービスの負荷にほかのサービスが引きずられることがなくなり、またサーバを増やすのも、そして減らすのも簡単になった点に、効果を感じている」と話す。

 吉岡氏は自身の経験から、“インターネットスケーラブルなシステムを構築する際のベストプラクティス”として、以下の要素を挙げる。「いずれも後者のほうが圧倒的にスケールし、素早く構築でき、しかもコストが安い」(吉岡氏)。

  • メインフレームではなく、コモディティサーバ
  • 商用ソフトウェアではなく、オープンソース
  • SAN/NASではなく、ローカルディスク(またはSSD)
  • ウォーターフォール開発ではなく、アジャイル開発
  • ベンダーによる開発ではなく、自社開発

 楽天のシステムがインターネットスケールしてきた詳しい歴史や、ROMAやFairyといった楽天独自の取り組みについても、同講演内で吉岡氏が詳解した。上述の丸山教授の講演同様、その全てをITmedia Virtual Expoで視聴できる。

ITmedia Virtual EXPO 2010 (9/7〜9/21)

ve.jpg

【仮想化&プライベートクラウド】パビリオンでは巨大な電子商取引のトランザクションを支える楽天の「インターネットスケーラブルコンピューティング」環境について、同社技術理事の吉岡弘隆氏により紹介されます。また“クラウドの理論的支柱”、早稲田大学大学院 丸山不二夫客員教授により、クラウドの歴史と未来がひも解かれます。視聴登録はこちら。


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