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» 2010年08月31日 13時40分 UPDATE

オルタナティブ・ブロガーの視点:クラウド時代の営業を考える

クラウド化が進むと、それを売る営業の仕事はどのように変わるのか。オルタナティブ・ブロガー林雅之氏が解説します。

[林雅之,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「『ビジネス2.0』の視点」からの転載です。エントリーはこちら。)

 クラウドの導入が進んでいくと、IT業界の構造の転換も求められます。その中で、営業のあり方も再構築も重要となってくると考えています。

 これまでは例えば、5年ごとのシステム更改時期に更改提案をすれば良かったのですが、今後はクラウド側でバージョンアップされるために、そういった提案手法もなかなか通用しなくなる可能性が考えられます。

 「クラウド時代の営業力」でも紹介させていただきましたが、クラウドの案件は、SI(システムインテグレーション)の案件と比べて1案件当たりの受注金額が低く、営業はなかなかモチベーションが上がらないでしょう。クラウドを中心とした営業になれば、これまで以上に多くの案件数に対応していく必要があります。つまり、薄利多売への転換が求められます。そして、営業の人員はコストになるので、今までの営業スタイルであれば、今以上の営業担当者の人数は必要なくなるでしょう。

 また、お客様への提案に当たっても、従来のシステム更改提案とは異なるため、どのような提案をしたら良いのか、そして、どこの部署をターゲットにすれば良いのか、見極めが難しくなります。クラウドの導入に関心があるのは、情報システム部門よりもコスト削減や攻めの経営に関心の高い、経営陣と考えられます。つまり、受注獲得のためのトップセールスなど、経営者に向けたアプローチが重要となります。また、クラウドは情報システム部門ではなくても、総務・人事部や営業部門でも経費として導入することができます。そのため、情報システム部門一辺倒の営業では、受注獲得が難しくなるかもしれません。

 さらに、クラウドの提案や商材は、これまでのSIソリューションと比べると実績が少なく、ノウハウが社内に蓄積されていないことも多々あります。ユーザー側も導入実績を気にされることでしょう。また、クラウドのセキュリティやサービス品質などについてユーザーの不安をぬぐい去ることも必要でしょう。何よりも、クラウドを導入することによるコストメリットを訴求できなければ、ユーザー側が導入に踏み切ることはなかなか難しいでしょう。

 1番つらいのは、クラウドを提案し続けることによって、1件1件の受注金額が縮小し、営業の人員カットが始まり、将来の営業の仕事がなくなってしまうのではないかという不安ではないでしょうか。特にSIを中心に営業をしていたITベンダーは、そういった危機感を持っているかもしれません。

 一方ユーザー側は、クラウドの動きに伴い、要望も変化してきています。NTTコミュニケーションズが、2010年5月に実施した「企業のクラウドサービス 導入意向アンケート調査結果」によると、「今後クラウドサービス利用において、どのようなサービスを充実してほしいと思いますか」という設問項目では、

  • クラウド導入の技術的な構築支援【40.7%】
  • クラウド導入コンサルティング(業務仕分け、ロードマップの策定等)【33.7%】
  • クラウドのプラットフォームにおけるセキュリティへの第3者評価【33.7%】
  • 低価格の低廉化【33.7%】
  • 既存システムも含めた全体システムに対するセキュリティサービス【32.6%】
  • ネットワークの最適化支援【27.9%】

 が上位を占めています。

 ユーザー側は、クラウド導入のための中長期的なロードマップやシステムの仕分け、そして、導入に向けての技術支援などが重要になってきているといえるでしょう。営業担当者としては、そういったユーザー側の要望を加味しながら、提案活動を進化させていく必要が出てきています。

 クラウド導入の流れは、必ずしもIT業界にとっては、プラスに作用するとは限りません。むしろ、規模の経済が働き、業界での勝者と敗者の優劣がはっきりすることになるでしょう。新たなビジネスモデルの構築とアプローチが求められています。営業はこれらの環境の中で、どのような対応をしていくべきか。10年先がなかなか見えない中で、真剣に営業のあり方を考えていく時期に来ているのかもしれません。

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