SAPとSybase、新たなデータ分析技術で中国市場を攻略

SAPとその子会社であるSybaseは、両社の技術を組み合わせたデータ分析製品を軸に中国およびアジア市場におけるビジネス拡大を目指す。

» 2010年09月01日 19時29分 公開
[伏見学,ITmedia]

 独SAPは9月1日、中国・北京で記者およびアナリストに向けて米Sybase買収後の事業戦略を説明した。業務データの検索速度を高めるSAPのインメモリコンピューティング技術とSybaseのデータ管理製品を組み合わせた新たなソリューションなどを武器に、中国およびアジア市場におけるビジネス拡大を狙う。

左からSAPのビル・マクダーモット共同CEO、Sybaseのジョン・チェンCEO、SAPのジム・ハガマン・スナーベ共同CEO、同アジア・パシフィック・ジャパン プレジデントのスティーブ・ワッツ氏 左からSAPのビル・マクダーモット共同CEO、Sybaseのジョン・チェンCEO、SAPのジム・ハガマン・スナーベ共同CEO、同アジア・パシフィック・ジャパン プレジデントのスティーブ・ワッツ氏

 SAPによるSybaseの買収は完了して間もないが、以前から戦略的パートナーとして協業していたこともあり、企業向けモバイルソリューションやビジネス分析(BI)、企業向け情報マネジメント(EIM)の分野で製品の戦略的な方向性を打ち出すなど、早くも経営統合によるシナジーが表われている。中でも相乗効果を発揮しているのがデータウェアハウス(DWH)の領域だという。インメモリ技術を備えるSAPのBI製品群「SAP BusinessObjects」をSybaseのデータベース管理システム「Sybase IQ」や「Sybase ASE」に組み込むことで、大量のデータをリアルタイムに分析できるようになる。

 SAPのジム・ハガマン・スナーベ共同CEOは「両社の技術を組み合わせることで大規模なデータ解析も瞬時に処理できる。変化への素早い対応が求められる企業にとって、ビジネス成長のドライバーとなるはずだ」とメリットを強調する。

 こうした新ソリューションは、特に成長著しいBRICsの企業でニーズが高い。SAPでアジア・パシフィック・ジャパン プレジデントを務めるスティーブ・ワッツ氏によると、中国企業の多くは急増する業務データをいかに的確に処理していくかが課題になっているという。また、中国ではビジネスにおけるモバイル活用が進んでいるが、特に新興企業ではデスクトップPCを導入せずにスマートフォンといったモバイル端末を社員が業務で利用するケースが増えており、このように企業でのPC活用を一足飛びにする動きはますます加速するとしている。

 IT調査会社の米Gartnerの調査では、2014年までに全世界におけるモバイルの普及率は90%、モバイル接続数は65億件に達する見込みだ。アジア地域における普及率は70%に迫り、多くのユーザーはモバイルを活用して企業アプリケーションにアクセスするようになるという。「新しいデバイスへ積極的に対応していくことは、われわれにとって大きなビジネスチャンスだ」とスティーブ氏は意気込む。

 中国市場の現状について、Sybaseのジョン・チェンCEOは「過去数年間で売り上げが2ケタ成長しており、巨大なマーケットととらえている。SAPは製造業をはじめ幅広い産業分野で強みを持つため、(経営統合によって)さらにビジネスは拡大するだろう。現在、Sybaseは北京、上海、西安などに研究拠点を構えているが、今後は研究所を増やすなどR&D(研究開発)の面でも強化していきたい」と抱負を語った。

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