韓国政府も積極姿勢、仁川で見た未来都市の姿【後編】(1/2 ページ)

産官学の密な連携によって都市開発が推し進められている韓国・仁川経済自由区域。10年後の完成に向けて変わりゆく都市の基盤にあるものとは。

» 2010年09月17日 09時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

3地区からなる仁川経済自由区域

 首都・ソウルの近郊、韓国の西北部に位置する国内第3の都市、仁川(インチョン)。黄海に面したその土地は古くから港町として栄えてきたが、2001年に仁川国際空港が誕生したことで、韓国の空の窓口だけにとどまらず、今やアジアのハブ拠点としてその重要度は増している。

 この仁川において今、さらなる経済発展に向けた大きなうねりが起きている。韓国政府が仁川経済自由区域(IFEZ)の構想を打ち出したことにより、2020年の完成を目指して新しい都市の建設が急ピッチで進められているのだ。

 IFEZは、松島(ソンド)、永宗(ヨンジョン)、青蘿(チョンラ)の3地区に分かれている。具体的に、ソンドはIFEZのランドマークとなる151階建ての仁川タワーや北東アジア貿易センター(NEATT)などを中心に国際ビジネスをけん引するほか、韓国でトップクラスの延世大学の新キャンパスや、海外大学との共同キャンパスを持つグローバル大学を設立し、知識情報産業エリアとしての役割を担う。

 仁川国際空港を抱えるヨンジョンは、北東アジアの物流の中心として大きな期待を集めている。同空港は2009年の1年間で総計234万トンにもなるIT関連製品が輸出されており、韓国と世界を結ぶ重要な役割を担っている。チョンラは、ゴルフ場やファミリーパークを数多く作るなどして、国内外から多くのレジャー観光客を集めていく。

現在のソンド地区の様子。まさに都市開発の真っ只中にあるのが分かるだろう 現在のソンド地区の様子。まさに都市開発の真っ只中にあるのが分かるだろう

 このように、「ビジネス」「物流」「レジャー」を3本柱に掲げるIFEZは、開発規模が約209平方キロメートル、計画人口が約51万人、投資総額は3兆2000億円に上る。

 中でも特に注目を集めるのがソンド地区である。訪れた9月上旬はまだ土地の埋め立て工事が行われている場所もあり、まさに街の土台作りの真最中という様相を呈していたが、将来的には53.4平方キロメートルという土地に高層ビル群や教育機関、公園が整備されていく。「米国のニューヨークやシカゴ、イタリアのヴェネツィアを模範とし、それらが持つ要素を取り込んだ都市開発を進めている」と関係者はコンセプトを語る。このソンド地区をはじめIFEZ全体の都市基盤として欠くことができないのがIPネットワークであり、その担い手の中心にあるのが米Cisco Systemsである。

韓国に20億ドルを投資

 前回の記事で見た上海万博のパビリオンなどでCiscoが提唱する「Smart+Connected Community(S+CC)」、すなわち、交通や教育、医療など生活にかかわるあらゆるものをIPネットワークで結ぶというインフラ基盤を現実の都市で構築すべく、同社は仁川市と2009年に覚書を締結、IFEZを未来の「Smart Connected City」と定めて、IPネットワークを活用した公共サービスやビジネス、医療、教育などが実現できる環境づくりを図っている。

 具体的には、北東アジア貿易センターにCisco Global Center for S+CCを設立し、IFEZに実装可能な新しいサービスモデルを開発、提供するほか、IFEZでの経験をほかの国や地域でも展開できるようなトレーニング施設やブリーフィングセンターを設置する。同社は韓国における事業展開に対して今後数年間で総額20億ドルを投資していく。

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