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» 2011年04月25日 12時00分 UPDATE

中堅・中小企業 逆境時の経営力:【第1回】経営戦略とIT (2/3)

[木村典宏,日本総合研究所]

IT投資とは何か

 企業におけるIT投資状況は、近年はゆるやかな減少傾向にあるが、事業を継続していくためには、一定程度の割合で投資が必要である。そのため、IT戦略を検討する際には投資におけるマネジメントの視点も必要となる。

1社平均情報処理関係諸経費の対年間事業収入比の推移(出所:経済産業省 情報処理実態調査) 1社平均情報処理関係諸経費の対年間事業収入比の推移(出所:経済産業省 情報処理実態調査)

 IT投資は、経営陣にとっては理解しにくい分野であるとの声を聞くことが多い。この原因は、IT投資の特徴を正しく理解していないためだと考えられる。

 実際に筆者が支援したプロジェクトにおいて、事業を行う上で必要となる設備投資のタイミングとITシステムの更新のタイミングが重なったことに加えて、事業環境が悪化したため、資金計画に支障が発生したケースがあった。そのため、更改が必要な既存のITシステムの延命策を立案せざるを得ない状況となった。結果的に、事業改革にも遅れが生じてしまったのである。本来であれば、中長期的な計画の中で、将来を見据えた企業全体として整合性のある投資計画を立案可能だったはずである。

 このようなケースを避けるためには、まず、ITにはライフサイクルがあるという点から認識する必要がある。計画を立案し、調達、構築を行い、利用が始まった段階から運用管理を継続的に行う。その後、老朽化やメーカによるサポート期限が来ることによって、更新の必要性が出てくるというわけだ。

一般的なITライフサイクル 一般的なITライフサイクル

 サーバを中心とした情報システムの更新サイクルは、一般的に5〜6年程度であることが多い。つまり、その周期でITにおける基本的な投資規模やタイミングの基本方針を確定していく必要がある。経営者は、自社のIT資産が現在どの段階にあるかを常に把握しておくべきである。

業務改革とIT投資の主従関係を理解せよ

 IT投資に対する効果は、経営課題の重要な項目として取り上げられることが多い。しかし、数多くのIT戦略立案やIT投資評価プロジェクトを通じて達した結論としては、ITの効果をIT単独で評価することは困難である、ということである。

 従来、IT投資効果は、新システムを導入することによって、作業が効率化され作業時間の短縮に伴い、人件費が削減されるといった整理をされることが多かった。しかし、このような整理は幻想であることが多い。作業単位で整理した場合、時間を削減することはできても、それが実際の人員削減(もしくは残業時間の削減)に結び付かなければ、P/L(損益計算書)上にはまったく反映されないからだ。

 また、IT環境を既に整備済みの企業が、既存環境の更新のためにIT投資を行う場合には、システム利用者の操作性や性能面を中心とした使い勝手の改良が主要テーマになることがある。こうしたテーマでは、新たな経済的効果を十分に見出すのは難しい。システムが業務をサポートするための道具であることを考えれば当然の結果である。

 効果を整理する場合には、ITプロジェクトにおいて前提となる業務改革をシステム化とセットで議論し、一体的に評価する必要があることに注意すべきである。

 IT投資における効果を経営的視点で評価するためには、ITを使って業務改革を行うのではなく、業務改革を行うことで収益拡大やコスト削減などの新たなビジネスプロセスを創出し、それを実現するための道具として新たなIT環境が必要になる、という位置付けで整理する必要がある。このように業務改革とIT投資の主従の関係をしっかりと理解した上で、効果を検討していく必要がある。

 この考え方を突き詰めていくと、ITの有効性を高め、自社のビジネスモデルを完成させるには、ITにどの程度依存しなければならないか見極める必要がある。つまり、自社における情報資源の生かし方を見出さなくてはいけないのである。

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