市場を絞ると、トップシェアが見えるバリュープロポジション戦略 50の作法

市場を大きく考えるほど顧客ニーズはぼやける。徹底的に特定の顧客ニーズについて考え抜くことが、競合を圧倒するダントツのトップシェア獲得につながっていく。

» 2011年04月27日 11時30分 公開
[永井孝尚,ITmedia]

連載「バリュープロポジション戦略 50の作法」について

 本当の顧客中心主義満足とは何か?――。連載「バリュープロポジション戦略 50の作法」は、欧米発のバリュープロポジションというフレームワークをベースに、日本が昔から持っていた顧客本位の考え方を見直し、マーケティング戦略を構築・推進するための50の作法をまとめた書籍『バリュープロポジション戦略 50の作法』の一部を加筆・修正し、許可を得て掲載しています。


 私たちは、市場を大きくすれば、ビジネスも大きくなっていくと思いがちです。しかし市場を大きく考えると、顧客ニーズはぼやけてしまいます。逆に、特定ニーズに絞って顧客に価値を提供することを考え、成功している事例はたくさんあります。

 例えば、業務用ミラーという市場があります。業務用ミラーとは、コンビニエンスストアや書店の天井際でよく見かける凸面鏡、あるいは駅や工場で防犯や安全確認、作業効率向上のために使われている鏡などのことです。この市場規模は非常に小さなものです。

 社員14人のコミーはこの市場で、実に8割以上の日本国内市場シェアを誇っています。さらにエアバス、ボーイングといった大手グローバル企業でも、コミーの商品は大量に採用されています。

 コミーが「気くばりミラー」と呼ぶ商品群は、単なる鏡ではありません。平面なのに広い空間を確認できる「FFミラー」、天井に設置し360度見渡せる「ドームミラー」。コミーしか提供できない、顧客の細かいニーズをとらえたユニークな商品ばかりです。

 「他社との競争は嫌い。顧客ニーズに集中して、商品を開発したい」という社長の小宮山栄さんは、気くばりミラーでどのようによりよい社会を作っていくか、顧客目線で常に考えています。

 市場規模がそれほど大きくなく、顧客のことを熟知し、技術力を持つ圧倒的なリーダー企業がいるので、他社はこの市場に参入しません。投資に見合わないからです。

 ここから学べることは、顧客ニーズが明確なニッチ市場を狙い、顧客満足度を高めることで、事業が成功する可能性も高まる、ということです。さらに競合が少ないので、ダントツのシェアを獲得することで、常に顧客ニーズに集中し、顧客に圧倒的な価値を提供できるようになるのです。

 顧客ニーズが明確に見えていることが、成功のカギなのです。

※本書に掲載された内容は筆者である永井孝尚個人の見解であり、必ずしも筆者の勤務先であるIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。

バリュープロポジション戦略 50の作法

バリュープロポジション戦略 50の作法

バリュープロポジション戦略 50の作法

著:永井孝尚

オルタナティブ出版

2011年3月30日

1260円(税込み)

マーケティング戦略を構築・推進するための50の作法を、バリュープロポジションという切り口で、さまざまなマーケティング理論を網羅しつつ、日本の事例を中心にまとめた、マーケティング担当者必読の書。


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