エンドポイントセキュリティ・再考のススメ

“シーソーゲーム”にならないクライアント活用の道エンドポイントセキュリティ・再考のススメ(1/2 ページ)

業務環境の改善につながると、PCやモバイル端末の活用に注目が集める。しかし、セキュリティや投資対効果の観点から踏みとどまってしまう場合も多い。理想的なクライアント環境の実現に必要なことは何か――。

» 2011年06月01日 10時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 今、企業では従業員の業務効率や生産性を高める手段として、コンシューマー市場で人気のスマートフォンやタブレット端末の導入に注目するところが増えている。また、夏場の節電に向けて在宅勤務を検討している企業も多い。企業のクライアント環境は、“モビリティー”をキーワードに大きく変わると予想されるが、受け入れを担う現場では課題が山積みとなっている。

 IDC Japanの調査によると、オフィス以外の場所で業務に利用されるモバイルPCは、2010年度では前年度より40万台多い約454万台だったが、2011年度は47万台増の約497万台になると予想される。スマートフォン(法人契約数ベース)は2010年度の約65万台から2011年度は約134万台に、タブレット端末も約4万800台から約11万5000台にそれぞれ増えるとみられる。

モバイルクライアントの出荷・利用状況(単位:万台、IDC Japanのデータを基に作成)

 しかし、PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの片山雅弘氏は、「モバイル環境の導入では、現場での検討から課題が表面化して進まない場合や、逆に“見切り発車”するケースが多い」と話す。モバイル活用を組織的に進めているのは、先進的な大企業とベンチャー企業に大別されるといい、ベンチャー企業ではセキュリティ対策を後回しにしてしまうところが少なくない。

セキュリティと利便性のシーソーゲーム

 モバイル機器など新しいクライアント環境の活用することで得られるメリットが利便性だ。だが目的を達成するには、当然ながら新たな投資を必要とする。片山氏が指摘する「課題が表面化して進まない」というのは、検討を進めていく中で当初に想定したよりも投資規模が膨らみ、期待通りの成果を見込みづらいというケースである。セキュリティ対策をはじめとする環境整備のコストと、利便性などの得られるであろうメリットとのバランスをどのように図るかが最大の課題だ。

 例えば、スマートフォンやタブレット端末を一般的な携帯電話の延長線にあるものととらえ、少ない投資でPCのように業務ができるだろうと期待してしまう。だが、実際にスマートフォンやタブレット端末をPC並みに活用しようとすれば、盗難や紛失、不正プログラムなどのリスクに備えるセキュリティ対策が求められ、スマートフォンやタブレット端末に適した業務システムの整備も必要になる。

PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャー 片山雅弘氏

 「見込んだ以上のコストが発生し、それに見合う生産性の向上や業績拡大を実現できるかが不透明になり、現場のIT部門では導入を推進する組織のトップにうまく説明できないという悩みを抱えている」(片山氏)

 モバイル機器を組織として活用していくには、PCと同様にモバイル機器を自社の資産として運用管理していくことが求められる。大企業では資金力を生かし、ある程度のコストを掛けてでも新しい環境に必要なセキュリティ対策を講じられる。しかし、資金力に限界があるベンチャー企業では目的の達成を優先させざるを得ない場合もあり、ユーザーがセキュリティに気を付けながら利用するといった見切り発車の対策で導入を進めてしまう。

 さらに、規模に関係なく、組織として新しいクライアント環境の活用を考えるよりも先に、個人所有の機器を社内システムに接続して利用してしまうケースも多い。組織としての管理体制が十分でなければ、情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティ問題が発生するリスクが高まる。万が一の際に適切な対応が取れないことも懸念される。ここでもセキュリティ対策が後回しにされがちにされ、「管理責任の範囲が不明瞭であるなど、“グレーゾーン”を抱えたまま運用している」と片山氏は指摘する。

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