ペタバイト超データの高速解析が世界の風力発電を支えるIBM Information On Demand 2011 Report

デンマークの電力会社であるVestasは、風力タービンの設置場所に関して最良の判断をすべく、地球上のあらゆるデータをかき集め、正真正銘の「ビッグデータ」を解析している。

» 2011年10月27日 07時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

 米IBMがネバダ州ラスベガスで開催中の年次カンファレンス「IBM Information On Demand 2011」では、「ビッグデータ」や「ビジネスアナリティクス」をテーマにさまざまなユーザー事例が紹介されている。

Vestas バイスプレジデントのラース・クリスチャン・クリステンセン氏 Vestas バイスプレジデントのラース・クリスチャン・クリステンセン氏

 デンマークに本社を構え、風力発電システム分野におけるグローバルカンパニーであるVestas Wind Systemsは、これまで67カ国で4万4500機の風力タービン(風力原動機)を供給してきた。同社が世界中から風力タービンの最適な設置場所を選ぶために活用しているのが、IBMのデータ解析システムである。

 二酸化炭素(CO2)抑制の要求や、原子力発電事故に対する脅威などの影響によって、クリーンエネルギーである風力発電に注目が集まっている。米国風力協会(American Wind Association)の報告によると、米国の風力発電設備容量を2030年までに20%に引き上げれば、CO2排出量を7600トン削減し、電力業界の水使用量を4兆ガロン減らすことが可能だという。ドイツやニュージーランドなどでも国家戦略として風力をはじめとする再生可能エネルギーの利用を推進している。

 このような市場ニーズの高まりを受けて、Vestasでは今まで以上に迅速かつ効率的な風力タービンの供給が求められるようになった。ただし、風力タービンは決してやみくもに設置すればいいというものではなく、風乱流や風向き、温度、設置面積などさまざまな環境上の問題を考慮する必要がある。もし風力タービンの設置場所を誤ると、投資に見合う発電量が見込めないどころか、電力コストの削減も不可能になる。同社でバイスプレジデントを務めるラース・クリスチャン・クリステンセン氏は、「最も適した設置場所を探すためには、世界中からさまざまなデータを収集し、その“ビッグデータ”を上手に活用しなければならない」と説明する。

 そこでVestasが着目したのが、構造化/非構造化を問わず、大容量のさまざまなデータを高速分析できるソフトウェア「InfoSphere BigInsights」だ。同社はこれまで風力タービン設置に関するデータを独自システムで収集、解析していたが、スピードや精度のさらなる改善に迫られていた。「よりきめ細かい情報が不可欠だった」とクリステンセン氏は振り返る。

 InfoSphere BigInsightsおよびIBMのスーパーコンピュータ「Firestorm」を組み合わせたシステム基盤を活用することで、天気予報、潮汐、地理空間データ、センサデータ、衛星写真、森林伐採マップなど、2.8ペタバイトの大量データを解析することが可能となった。しかもこれらのデータは、地球の表面を1キロ四方に分割し、各マス目に150ものパラメーターを設定して細かく収集したものだという。クリステンセン氏は「従来はデータの解析に3週間かかっていたが、わずか15分で完了できるようになった」と意気込んだ。

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