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» 2012年04月27日 13時00分 UPDATE

官公庁の情報発信ポリシーから学ぶ:外務省が考える情報発信とソーシャルメディア運営とは

企業がソーシャルメディアを運営する場合、そのほとんどは商業目的であるといっていい。しかし、営利を追求しない組織、例えば官公庁ではどのような使い方をしているのだろうか。外務省の大臣官房IT広報室 首席事務官に話を聞いた。

[山田竜司,ITmedia]

 利用が拡大するソーシャルメディア。米ニールセンの調査によれば、Facebook、Twitterともに日本人のユーザー数は1000万人を超えているという(2012年3月時点)。こうした中、企業がソーシャルメディアを活用してマーケティング活動を行うといった事例も増えてきている。民間企業だけでなく、官公庁もソーシャルメディアを使って積極的な情報発信を行っている(Jガバメント)。営利目的ではない官公庁のソーシャルメディア運営とはどのようなものなのだろうか。また、ソーシャルメディア担当者はどんなことを考えて情報を発信しているのだろうか――。外務省の大臣官房IT広報室 首席事務官、笠原謙一氏に聞いた。

photo 外務省 大臣官房IT広報室 首席事務官 笠原謙一氏

外務省はソーシャルメディアで何を伝える?

――外務省は現在、どのようなソーシャルメディアアカウントを運営していますか。種類と運用目的を教えてください。

 外務省には、公式アカウントと在外公館やイベントごとのアカウントの2種類があり、公式アカウントは2011年6月から運営しています。公式アカウントは現在、TwitterとFacebookで取得しています。英語と日本語があるので、全部で4つのアカウントを持っているということになります。

 アカウント開設の目的は、外務省の広報窓口の中心であるWebサイトへの誘導です。外務省はWebサイトで大臣、副大臣や政務官の動向などを発信しているのですが、Webサイトの更新情報を知らせるために、ソーシャルメディアで毎日、日本語で10件、英語で5件程度の情報発信をしています。

photo 外務省公式アカウント

――Webサイトやソーシャルメディア運用のKPI設定を教えてください。

 KPIとして、外務省Webサイトへの流入数、Twitterアカウントのフォロワー数の増減、「いいね!」の数を計測しています。担当者は毎日数値を確認し、部内で月1回共有しています。

 「サイトを見に来ている人の役に立つ」という広報の目標を達成するために、ソーシャルメディアで情報発信をするに際し、3つのことを心がけています。それは、「正確であること」「迅速であること」「分かりやすいこと」です。「サイトを見に来ている人の役に立つ」という目標を考えるとKPIの設定は難しく、数字自体を目的にはしていません。とはいえ、外務省庁内のかけ声としては、他国外務省Webサイト中で「世界一」を目指していますが……。世界各国の外務省にあたる省庁と比べて、Webサイト閲覧数、フォロワー、ファンの数でも5本の指に入る水準をキープしています。ただ、目標自体は前述の通りなので、順位だけで一喜一憂しないようにしています。何をKPIにするのがいいか、試行錯誤を繰り返しています。

――ソーシャルメディアの運営体制、運用ポリシーを教えて下さい。

 ソーシャルメディアの公式アカウントは1人で運営しています。ソーシャルメディアにいただいたリプライに対しては返事をしないというルールはありますが、公式Webページの ソーシャルメディアアカウントに対するユーザーのコメントは常に見ています。

 また、わたし個人としても外務省のWebサイトをよりよくしたいという気持ちは強いので、Web担当者が多く集まる会合に積極的に参加しています。

公式アカウントの使い方

――外務省のWebページで人気があるコンテンツと、ソーシャルメディアとの関係について教えてください。

 外務省のWebサイトは日本語版と英語版でターゲットが違うので人気のあるコンテンツも異なりますが、共通して子供向けのコンテンツ(キッズ外務省Kids Web Japan)が人気です。パスポートやビザ情報、海外安全情報など、海外渡航者にとって身近なトピックも人気があります。

 これらのコンテンツは人気ですが、内容をそのままソーシャルメディアでも紹介することはありません。ソーシャルメディアでは発信する情報を絞って、ユーザーに「自分に関係がある」と思ってもらえるように心がけています。

 公式アカウントのよさは「公式」という重みがあるところです。ただ、最近は、個人的には公式アカウント以外に、例えば上記の子供向けのような柔らかいコンテンツをつぶやくアカウントがあってもいいかなと考えています。あるいは、公式アカウントが更新した内容を分かりやすく解説する別のアカウントがあっても面白いですね。

 もちろん、別アカウントを運営することで、一般向けアカウントに対するFacebookの「いいね!」、Twitterのフォロワー、公式サイトの訪問者数などを増やすのが目的です。「面白い話をとにかく配信しよう」とは思わないですし、それはわれわれの仕事ではありません。

 ソーシャルメディアを通じて外務省に親しんでいただくこと自体はありがたいですが、その結果、外務省の情報が「分かりやすく、早く、正確に」伝えることにつながっていなければならないと考えています。

photo

――外務省関係者の個人アカウントの運営は、どの程度個人に任せていますか。例えば、藤崎大使は個人で公式アカウントを運営していますね。

 在アメリカ合衆国大使館の広報はFacebookやTwitterのアカウントをいち早く取得していました。そのような環境で藤崎大使から「いち個人ではなく、在米大使館の館長として発信したい」と申請がありました。もともと米国はTwitterやFacebookの発祥の地なので、自然な流れなのかもしれません。

 外務省では在外公館にいる人間が海外情報の最前線なので、在外公館のソーシャルメディアを通じた情報発信が一番正確で早い情報であると考えています。

 在外公館ホームページは日本語、英語以外の38の言語で、現地情報の発信をしています。在外公館の職員のソーシャルメディアアカウントを使った情報発信は、現地の窓口として今後必要な要素になってくるでしょう。

 タイ洪水の際、現地タイ人や在タイ邦人のために、現地の大使館が頻繁に情報を発信し、現地の活動を援護した例もあります。担当者がそれぞれの目的に従って、各々の判断の下に情報発信をすればいいと考えています。

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