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» 2012年05月29日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:“ゆでガエル”状態からの脱出 電話帳DBを営業必須ツールに

「売り上げ拡大、成功への方程式」――。今春から日本ソフト販売はこんなキャッチフレーズを掲げて事業に取り組んでいる。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 「セーブマネーからメイクマネーへ」。電話帳データベース(DB)事業を展開する日本ソフト販売はこのほど策定した中期経営計画で、コスト削減から売り上げアップにつながるITサービス提供へと販売戦略の舵を切った。中川基社長は、「ユーザー企業が業績拡大に直結するIT活用を求めているからだ」と説明する。

成功への方程式とは

 「売り上げ拡大、成功への方程式」。日本ソフト販売はこんなキャッチフレーズで、2012年3月からマーケティング活動に役立つ電話帳DBのオンライン販売を開始した。データの活用方法はまず、約820万件の法人データを持つ電話帳DBと自社の顧客データを照らし合わせて、自社の顧客がどの業種に多いのかを分析する。強みが分かったら、ターゲットにする地域に想定顧客がどれだけいるかを調査する。見込み顧客数が少なければ別の地域で調べ直す。次に絞り込んだ地域で、試験的なプロモーションを実施する。予想通りの成果を得られたら、地域を拡大し営業活動を本格的に展開する。

 日本ソフト販売は、このストーリーに沿った電話帳DBのパッケージソフトとサービスを安価な料金で整えた。具体的には、自社の顧客データを分析し、強みの業種と地域(住所)が分かる「業種分析マスターチェック」、ターゲットにする企業を瞬時に表示する「業種サーチプロ」、テスト販売に使う100件のデータを抽出し、3000円の料金で提供するサービス、電話帳DBの中からターゲットとする業種と地域をより多く選び出して提供するサービスである。これが「成功の方程式」というわけだ。

 精度の高いマーケティングデータにするために、電話帳DBに分類する業種を150種類から1005種類へと細かくした。そのために、例えば、飲食店なら和食、洋食、中華なのかを、ハローページや飲食店のWebサイトなどから調べた。どうしても分からない場合は、飲食店に直接電話をする。そんな確認作業に約1年かけたという。地域情報を持つ新聞販売店などと協業し、1件1件の登録内容を充実させることにも取り組んでいる。

 こうした機能を生かせば、通信販売会社や百貨店、不動産会社、住宅会社、金融機関などB2C企業に加えて、B2B企業にも売り込める。1人1人の営業担当者が営業活動に使えるようにもしたという。利用シーンは、例えば、展示会の運営会社が展示会来場者の名簿を整理し、テレマーケティングに使う。その際、電話帳DBなどを使って、どんな業種の人が来場し、どのブースに立ち寄ったのかなどに加工し、出展者が営業活動に使える価値のあるデータに仕立てる。その成果が上がれば、運営会社は次回の展示会への出展者獲得に生かす。

 医療機関に商品販売する企業が新たな市場として、産婦人科医院を開拓する際、ある地域に産婦人科医院が何件あるかを調査し、その中でターゲットとする開業10年以上の医院を絞り込んで効果的なアプローチをとる。開業10年以上ということが分かるのは、電話帳DBを毎年、毎月更新し続けているからだ。

全国の電話帳をかき集めてDBを構築

 中川社長は通販会社でシステム開発を担当していたころ、JETRO(日本貿易振興協会)のある人から、米国で電話帳をOCR(光学式文字読取装置)で読み込んだ電話帳データを提供する事業が始まったという話を聞いた。通販会社にとって、そんな電話帳DBがあれば、顧客データの入力時間を短縮できると思い、社内にその仕組み作りの開発を提案したという。だが、受け入れられなかったため、「自分で事業化しよう」と決断した。

 45歳で通販会社を退社した中川社長は、1988年にソフト開発会社のシーシーイー(CCE)を設立し、受託ソフト開発を請け負うとともに、約3年かけて電話帳DBの開発に着手した。電話帳DBの基であるNTTの電話帳の発行版数(2010年)は、タウンページが292、ハローページが789と膨大な量になる。地域によって発行時期が異なる電話帳を毎月、毎年購入し、電話帳DBのデータを更新し続けてきたのだ。

 1995年には、開発と販売を分離するために日本ソフト販売を設立、20人強の営業担当者を配置し、電話帳DBの本格販売を開始した。その一つである全国e電話帳は、電話帳データに加えて、地図情報や企業情報、最寄り駅情報などを搭載した「情報配置BOX」と呼ぶサーバを企業内イントラネットに設置。ユーザーはWebブラウザから使う。料金は使った分だけを支払うサービス形態にした。

 電話帳DBの中から必要な地域・業種のデータを購入できるサービスもある。この機能を使って、法人名や個人名などから住所や電話番号を検索したり、電話番号から住所や名称を検索したりできる。電話番号から近隣の法人、個人、施設なども調べられる。多くの企業がこうした機能を使って電話代の節約や顧客データなどの入力時間の短縮化を図ったり、顧客からの問い合わせに素早く対応したりする。

 具体的には、金融業の本人確認や企業審査、通信販売会社の注文や申し込み、物流会社の配送などだ。カーナビゲーションや年賀状ソフトなどにも、この機能が組み込まれている。カーナビに目的地の電話番号を入力すれば、その場所を表示する。年賀状ソフトに電話番号を入力すれば、「●●町1丁目」といったおおよその住所を表示する。

 こうした用途は着実に広がっていったが、数年前から業績が伸び悩み始めた。実は、電話帳DBの売り上げの約8割が既存顧客からで、黙っていても購入してくれる企業が多かったという。それが当たり前になり、利用する顧客が一巡したにもかかわらず、新規顧客の開拓や新しい利用形態の提案をしてこなかったという。

 「ゆでガエル状態になっていた」(中川社長)。結果、売上高はこの10年間、27億円前後で推移したままだった。その状況から1日も早く抜け出すために、電話帳DBを強力な営業ツールにする「成功の方程式」を編み出し、売り上げ30億円を目指すことにした。中川社長は「達成できなければ、社長を辞める」覚悟である。

一期一会

 中川社長は通販会社で働いていたころ、ITは売り上げ増や経費削減を図るツールととらえていた。従って、極力、「システムを作らない」「プログラムを書かない」ことに努めたという。電話帳DB事業をサービス提供型にしたのは、そんなことも背景にあるように思える。

 ユーザーが無駄なシステム投資をせずに、Webブラウザから利用できる環境にした。クラウドサービスの考えをいち早く取り入れたのだ。その利用範囲を広げるのが成功の方程式である。中川社長は「300万人の営業担当者に使ってもらう」ことを夢見ているという。

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