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» 2012年06月07日 07時55分 UPDATE

松岡功のThink Management:CEOに求められる新たな資質

IBMが先頃発表した世界の主要企業のCEOを対象にした調査結果から、トップマネジメントの最新事情を探ってみたい。

[松岡功,ITmedia]

高業績企業のCEOが注力する3つの取り組み

 日本IBMが先頃、世界の主要企業のCEOを対象とした「IBM Global CEO Study 2012」の調査結果を発表した。それによると、ソーシャルメディアの進展によって人々が広く深くつながっていく環境が拡大する中で、企業が優位性を確立するために、CEOは新たなテクノロジーを活用し、社員や顧客、ビジネスパートナーとの「つながり」を重視していることが明らかになった。

 IBMでは、ソーシャルメディアの爆発的な進展により、これまで以上に人々が広く深くつながっていく環境を「コネクテッド・エコノミー」と命名。今回の調査では、CEOが進化するコネクテッド・エコノミーへの対応を急速に進めていることが分かったとしている。

 また同調査では、売上成長率と収益性が業界平均より高いと回答した企業を「高業績企業」と定義し、それ以外の企業との比較分析を行っている。その結果、高業績企業のCEOが、コネクテッド・エコノミーにおいて企業の優位性を確立するために、次の3つの取り組みに注力していることが明らかになった。

 まず1つ目は、価値観の共有を通じて社員に権限を委譲することである。組織をオープンにして社員に権限を委譲し、社外とより積極的につなげることが肝要だ。社員が成功するために必要な特性として、協調性(75%)、コミュニケーション能力(67%)、創造性(61%)、柔軟性(61%)の4つを挙げている。また、優れた社員を惹きつけるために重要な組織要因として、共有される価値観(65%)、コラボレーションを推奨する職場環境(63%)、組織のミッション(58%)を挙げている。

 2つ目は、「個」のレベルで顧客に応対することである。今後3年から5年のうちに、ソーシャルメディアが対面に並ぶ主要な顧客接点になると指摘。個々の顧客を理解する重要性は以前から議論されてきたが、ここにきてようやくその実現手段が追いついてきたという。調査結果をみると、「現時点でソーシャルメディアが重要な顧客接点である」と回答した割合は16%に過ぎないが、「3年から5年後には重要な顧客接点になる」と回答した割合は57%にまで高まっている。そうした状況から、CEOはソーシャルメディアが「個」客に関する洞察の源泉であり、「個」客とつながる手段であると考えているという。

 そして3つ目は、パートナーシップによってイノベーションを増幅することである。他社との連携を積極的に行うというものだ。この点については、2008年の調査では55%だったが、今回の調査では69%に達した。高業績企業では「イノベーションを実現するために他社と広範囲に連携する」と回答した割合が59%にのぼり、低業績企業に比べて他社とのつながりを重視する割合が28%高いことが認められた。

ソーシャル化のトレンドを察知するセンスが必要

 IBM Global CEO Study は、CEOが抱えている戦略的課題や関心事を理解・分析することを目的とし、世界の主要企業のCEOや公共機関のリーダーを対象に、IBMのコンサルタントが直接インタビュー形式で調査を行ったものである。2004年の調査開始以来2年ごとに実施し、5回目となる今回は世界64カ国、1709人(うち日本からは175人)のCEOを対象に実施した。

 CEOに求められる資質(出典:IBM Global CEO Study 2012) CEOに求められる資質(出典:IBM Global CEO Study 2012)

 同調査では、CEOに求められる資質についても聞いている。その結果は図に示した通りだが、回答率の高い「顧客満足への執着心」「社員を鼓舞するリーダーシップ」「リーダーをまとめる手腕」を、重要な3つの資質としている。

 そのうえで同調査では、これら重要な3つの資質が、先述したコネクテッド・エコノミーにおいて企業の優位性を確立するための3つの取り組みとも整合していると指摘。リーダーとしてのCEOの進化が、社員の行動様式、企業文化、さらには業績に直接影響を及ぼすことを、CEOは本能的に感じ取っていると記している。

 そして、レポートの締めくくり部分で次のように分析している。

 「今日のCEOは、前任者たちがほとんど経験したことのないような状況に置かれている。過去にも技術革新の時代は何度かあった。しかし、今の時代は、これまでとはいくつかの点で異なっている。まず、複数の新たなテクノロジーが同時並行的に社会に影響を及ぼしている。また、それらは今までにない速さで普及していることである」

 「CEOは自身がやや不安定な状況に置かれていると認識している。CEOの周りには、新たなテクノロジー、それを使った新しいライフスタイルやワークスタイルがあふれている。しかも、自分よりも新卒社員や時には自分の子供のほうが、それらをよく理解しているのである」

 続けて、欧州のある金融機関のCEOのコメントとして、こんな一文を載せている。

 「CEOには、現代のソーシャル化のトレンドや価値観の変化を察知するセンスが必要だ。そういう意味では、多少の謙虚さを持つことが求められる」

 このセンス、CEOに求められる新たな資質といってもいいだろう。レポートではこの一文の後、「社員と同様に、CEOも自分自身を変える必要がある」と締めくくっている。今の時代をとらえたストレートな提言である。

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