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» 2012年06月22日 12時30分 UPDATE

松浦尚子のワイン&コミュニケーション:ワインは古いものほどおいしいのか?

すべてのワインが年を重ねるごとにおいしくなるわけではありませんが、中には瓶詰めから数十年経って最も味わい深くなるワインもあるのです。

[松浦尚子(サンク・センス),ITmedia]

 ワインは生き物と言われます。理由は、瓶詰め後も時間の経過とともに変化し続け、若いころとは格段に異なる複雑な香りや味わい、余韻を生み出すような「熟成」を遂げるお酒だからでしょう。

 ただし、勘違いのないように! どんなワインでも年を重ねるほどおいしくなるわけではありません。それぞれのワインの「天命」はほぼ決まっていて、1000円代のワインが10年後によりおいしくなる可能性はまずありません。一般的なワインは、フレッシュな若さを楽しみながら、3〜5年以内に飲むのが望ましいでしょう。

 縦軸をワインのおいしさ、横軸を時間に見立てて、曲線グラフを描くと、右肩上がりの山型になります。頂点が最もおいしいものになります。グラフの山の大きさが小ぶりで、頂点が低いほど凡庸なワイン、なだらかで大きな上り曲線を描き、30年後にようやく山頂に達するようなワインが、世でいう「偉大なワイン(Grand Vin:グランヴァン)」です。高みを極めた後は下り坂へ。白も赤も同様に色調は茶色に近づき、味わいは酢に近くなっていきます。私にはまるで森の中に落ちた枯葉が土に戻っていく姿を連想させます。

 古くなるにつれて価格が上昇する銘醸ワインは、品質が優れており、大きな山を描くことが必須条件です。スイスの某大手銀行には巨大な貯蔵庫に数千本のワインが眠り、ワインが貯蓄財の役割を担っているという話を聞くことがあります。そこに眠るワインは、必ず値が上がると分かっている著名なものばかり。瓶詰めされる前に買い付けるなどの手法も取られています。

 では、どんなワインがこうした条件に当てはまるのでしょう。世界でも揺るぎない地位を築いている5大シャトー(chateau:醸造所の意)を紹介します。パリからTGV(新幹線)で3時間ほど下ったあたり、フランスの南西方面にボルドー地方メドック地区という一大銘醸地があります。

 今からさかのぼること約150年前、1855年にパリで開催された万国博覧会の折り、ナポレオン3世がフランスワインの権威を世界に知らしめるべく、同地区からすでに呼び声の高かったはえ抜きのシャトーを選び、さらに第1級から第5級まで格付けをするよう命じました。全体で約60のシャトーが選ばれましたが、長い歳月を経て栄枯盛衰があり、格付けの実力は変動しています。ただし、第1級格付けの5つのシャトーだけは別格で、現在も変わらず君臨し、名声とともに実力も備えています。

 具体的には、(1)シャトー・マルゴー(2)シャトー・ラトゥール(3)シャトー・ムートン・ロートシルト(4)シャトー・ラフィット・ロートシルト(5)シャトー・オーブリオンの5つ。特にシャトー・マルゴーは、甘美なまでの芳香さを兼ね備えた最も女性的で上品なワインです。フランスが誇る遺産の1つとみなされるほど、卓越したワインを生む優美なシャトーです。

著者プロフィール

松浦尚子

(有)サンク・センス代表取締役社長

ボルドー国立大公認ワインテイスター

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神戸大学教育学部卒。教育・出版会社ベネッセコーポレーションに勤めた後、フランスに渡り、世界の権威であるボルドー大学ワイン醸造学部が主宰する、日本人では数少ないワインテイスター専門家資格を取得。広島県の第3セクターのワイナリー設立にかかわり、米国・ボストンを本拠地とする投資会社に籍を置いて、日仏間で働く。通算5年間フランスに滞在した後、2002年秋に帰国。滞在中には、難関フランス文部省認定のフランス語資格試験DALFも全て取得する。帰国後、2003年4月に有限会社サンク・センスを設立し、代表取締役に就任。「フランス、ワイン、食」をテーマに、さまざまな切り口からこれまでにない発想でワインセミナー、イベントを中心にプロデュースを行う。2005年1月に立ち上げたサンク・センスワインCLUBには、ワインを軸に旅やグルメ、趣味など幅広い分野に関心を持つメンバーが集い、これまでにない質の高いコミュニティを形成している。また、フランス大使館主催事でのプレゼンターや六本木ヒルズクラブでのワイン講師、経営者を中心としたビジネスマン向けのワイン講演も数多くこなし、実績は多数。これまでに取り上げられた新聞、雑誌、ラジオ出演は数え切れない。富裕層向け雑誌や、大手都市銀行が運営するビジネス情報サイトなどでコラム連載も手掛け、多彩に活躍している。


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